副業・フリーランスとの業務委託契約で何に注意すべき?副業・フリーランスへの業務委託で「偽装請負」と判断されないか不安を感じていませんか。偽装請負とは、契約形式は業務委託でも実態は雇用に近い違法状態のこと。判断は契約書の名称ではなく業務の実態でなされ、企業には罰則や予期せぬ直接雇用のリスクがあります。結論を先にお伝えすると、偽装請負を回避するポイントは3つです。厚生労働省告示37号の判断基準(指揮命令・労働時間管理・独立処理)を理解する契約書で業務範囲と受託者の裁量を明確化する稼働中は具体的な作業手順を指示せず距離感を保つです。さらに2024年11月に施行された「フリーランス新法」への対応も欠かせません。本記事では、発注側企業の担当者が今日から使える実務知識として、判断基準・罰則・契約書の書き方・新法対応・稼働運用までを順に解説します。本記事でわかること偽装請負の定義・3類型と、違法とされる根拠業務委託契約と雇用・派遣契約の3つの違い厚生労働省告示37号に基づく偽装請負の判断基準偽装請負と判断された場合の罰則・労働契約申込みみなし制度偽装請負を防ぐ契約書の作り方と必須記載項目フリーランス新法(2024年11月施行)への対応ポイント稼働中の運用で偽装請負を防ぐ実務の3ポイント業務委託の偽装請負とは|契約と実態がズレた違法状態偽装請負とは、契約形式は業務委託や請負であるにもかかわらず、業務の実態としては労働者派遣や雇用と同じになっている状態を指します。たとえば契約書には「請負契約」「業務委託契約」と書かれていても、現場では発注者が受託者に対して直接作業手順を指示し、勤務時間や勤務場所を指定している場合、偽装請負と判断される可能性があります。重要な点は、偽装請負かどうかは契約書の名称ではなく業務の実態で判断されることです。たとえ契約書に「指揮命令関係はないものとする」と明記していても、現場で具体的な指揮命令が行われていれば、その記載は意味をなしません。偽装請負が違法とされる理由業務委託契約や請負契約には、雇用契約のような労働関連法令(労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法など)が適用されません。発注者にとっては、社会保険料の負担なし・解雇規制なしで人材を確保できる利点がある一方、受託者は労働者保護の枠外に置かれます。そこで、本来は雇用すべき関係を業務委託の形で偽装すれば、企業は労働者保護の責任を逃れて有利な条件で働かせることができてしまいます。これを防ぐため、労働者派遣法・職業安定法・労働基準法は偽装請負を違法行為として明確に禁止しています。偽装請負の3類型偽装請負には、契約構造によって主に3つの類型があります。労働者派遣型A社の従業員Xが、契約上はA社・B社間の業務委託でB社の指揮命令下で働く。実態は労働者派遣。労働者供給型雇用関係のない労働者を業務委託の名目で別会社に送り込み、現場で指揮命令を受けさせる。中間搾取の構造。フリーランス型(直接契約型)企業が個人のフリーランスと直接業務委託契約を結ぶが、現場では従業員と同じように管理・指示する。副業・フリーランス活用で最も発生しやすい。本記事では、副業・フリーランスへの業務委託で最も問題になりやすい③フリーランス型を中心に解説します。 業務委託契約と雇用・派遣契約の3つの違い偽装請負を理解するには、まず業務委託契約と雇用契約・派遣契約の構造的な違いを押さえる必要があります。違いは大きく3点あり、いずれも偽装請負の判断材料になります。一覧でまず全体像を把握しましょう。観点業務委託契約雇用契約派遣契約①労務管理なし(勤怠・賃金・福利厚生の適用外)あり(就業規則に基づく)あり(派遣元の規則)②指揮命令なし(業務の進め方は受託者の裁量)あり(使用者からの指揮命令)あり(派遣先からの指揮命令)③就業時間・場所原則不問(契約で定めれば可)会社が定める派遣先が定める契約終了契約満了・双方合意退職・解雇(規制あり)派遣期間満了違い1:労務管理わかりやすいところでは勤怠や賃金、福利厚生などを指します。業務委託契約の場合にはこの点について管理や適用をすることは基本的にありません。一方、雇用・派遣契約の場合には、就業規則に基づいて行われる必要があります。違い2:指揮命令業務委託契約の場合、その当該業務の依頼にあたっての説明や情報共有などは可能ですし、もちろんしないと成立しませんが、それ以外の実務的な指揮命令は原則行われません。つまり、納品物や成果を基準としてコミットしてもらうことになるので、労働の具体的方法まで定めることはできないのです。法人との取引と同じですね。一方、雇用・派遣契約の場合は、指揮命令による業務コントロールがもちろん認められています。違い3:就業時間や就業場所これは労務管理の観点と少し似ている部分でもあります。業務委託契約では、時間や場所については契約書に明記されていない場合は原則不問となります。一方、雇用・派遣契約の場合には、その雇用企業あるいは派遣先企業が就業の時間や場所を定めることになります。業務委託の2類型(請負契約と準委任契約)業務委託契約は、民法上「請負契約」と「準委任契約」のいずれかに分類されます。両者は報酬発生の条件が異なり、契約書の作り方にも影響するため整理しておきましょう。項目請負契約準委任契約目的成果物の完成業務の遂行そのもの報酬発生条件成果物が完成・納品されたとき業務を遂行したとき(成果物の完成は不問)責任契約不適合責任あり善管注意義務あり典型例・Webサイト制作・動画制作・原稿執筆・コンサル・エンジニアの常駐開発・運用支援どちらの類型でも発注者に指揮命令権はなく、業務の進め方は受託者の裁量に委ねられます。この前提を契約書と現場運用の両方で守ることが、偽装請負の回避につながります。 偽装請負の判断基準|厚労省告示37号の3要件偽装請負かどうかの判断基準は、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)で示されています。この告示によれば、適法な業務委託・請負と評価されるためには、受託者側が以下の3要件をすべて満たす必要があります。要件1:業務遂行方法の指示・管理を受託者が自ら行うこと業務の進め方や手順、品質管理、業績評価などを、受託者が自分の裁量で行っている状態が必要です。発注者が直接、作業工程や進捗を細かく指示している場合は、この要件を満たさず偽装請負と判断されやすくなります。実務上は、発注者から受託者への要望や調整は、契約締結時に合意した内容に沿って、受託者の管理責任者を通じて行うのが原則です。要件2:労働時間の管理等を受託者が自ら行うこと始業・終業時間、休憩時間、休日、残業の有無などを、受託者が自分で管理している状態が必要です。発注者が一方的に勤務時間を指定したり、勤怠管理表の提出を強制したりしていると、この要件を満たさないと判断される可能性が高くなります。ただし、業務の性質上、特定の時間帯や場所での稼働が必要な場合に、双方の合意のもとで稼働時間や場所を契約書に定めることは問題ありません。重要なのは「一方的な拘束」かどうかです。要件3:契約相手方から独立して業務処理すること受託者が、自分の業務として独立して処理している状態が必要です。具体的には、業務に必要な機材・資金・備品を自ら準備し、業務遂行の責任を自ら負っていることが求められます。発注者の設備や機材のみを使って単純な肉体労働を提供しているような状態は、実態は労働者派遣と判断されるリスクがあります。偽装請負と判断されやすい具体ケース5選実務上、特に注意が必要なのは以下のようなケースです。発注側の善意で行われがちな運用も、判断基準に照らすと偽装請負と評価される可能性があります。受託者に毎日の勤怠報告(始業・終業時刻)を強制している受託者を朝礼や定例会議への参加を必須にしている受託者の作業手順を発注側のマニュアルで一律に拘束している発注側の社員と同じ就業規則・服務規程の遵守を要求している受託者にPC・スマホ・交通費を無償で貸与・支給しているこれらに当てはまるからといって直ちに偽装請負と判断されるわけではなく、契約内容と業務実態を総合的に見て判断されます。ただし、複数該当する場合は早急に運用の見直しが必要です。偽装請負と判断された場合のリスクと罰則偽装請負と判断された場合、企業には複数の法的リスクが発生します。罰金などの直接的なペナルティだけでなく、想定外の雇用関係を負うリスクや社会的信用の失墜など、影響は多岐にわたります。法令違反による罰則偽装請負は以下の法律に違反する可能性があり、それぞれに罰則が定められています。労働者派遣法59条: 無許可で労働者派遣事業を行ったとして、1年以下の懲役または100万円以下の罰金職業安定法44条: 無許可の労働者供給を行ったとして、1年以下の懲役または100万円以下の罰金労働基準法6条: 中間搾取の禁止に違反するとして、1年以下の懲役または50万円以下の罰金発注側企業と受託側企業の双方が罰則の対象となり得る点に注意が必要です。労働契約申込みみなし制度の適用リスク実務上、企業にとって最も重いリスクが「労働契約申込みみなし制度」です。これは偽装請負と認定された場合、発注側企業が受託者の従業員に対して労働契約の申込みをしたとみなされ、受託者側がそれを承諾すれば直接雇用が成立する制度です。つまり、業務委託のつもりで運用していた人材を、企業が想定しない形で正社員として雇用しなければならなくなる可能性があるのです。労働条件の遡及・社会保険料の遡及徴収・未払い賃金請求などの追加負担も発生し得ます。是正指導・社名公表・社会的信用の失墜労働基準監督署や労働局による調査・是正指導の対象となります。是正勧告に従わない場合は社名公表され、取引先・採用候補者・顧客からの信用を失う事態にもつながります。また、労災事故が発生した際、業務委託であることを理由に責任を否定しても、最終的に労働者性が認定されれば事業主としての責任を免れません。安全配慮義務違反による損害賠償請求を受けるリスクもあります。偽装請負を防ぐ業務委託契約書の作り方偽装請負を回避する第一歩は、契約書を適切に作ることです。契約書の記載は実態判断の一要素に過ぎませんが、契約書と実態の整合が取れていないと、それ自体が偽装請負を疑われる材料になります。逆に、契約書で業務範囲と受託者の裁量を明確に定めていれば、実態運用を整える指針にもなります。契約書に必ず記載すべき基本5項目契約書に必ず記載すべき基本項目は以下の5つです。契約期間開始日・終了日・更新条件・解約予告期間委託業務の内容何を、どこまで担当するかを具体的に記述。曖昧な「その他付随する一切の業務」は避ける成果物・納品物成果物の仕様・品質基準・検収方法・修正対応の範囲報酬金額・算定根拠(時間単価か成果単価か)・経費の取り扱い支払時期支払期日・支払方法・遅延時の対応(フリーランス新法の60日以内ルールに準拠)必要に応じて記載する任意項目業務の性質に応じて、以下の項目も契約書で定めておくと、後々のトラブルを未然に防げます。請負契約か準委任契約かの明示知的財産権の帰属(成果物の著作権をどちらに帰属させるか)秘密保持義務(業務上知り得た情報の取り扱い)競業避止義務(同業他社との契約制限の有無と範囲)再委託の可否(第三者への業務委託を許可するかどうか)反社会的勢力の排除条項損害賠償の範囲・上限額不可抗力による免責条項用語の使い分け(面接→面談、給与→報酬など)業務委託契約と雇用・派遣契約では利用する言葉を使い分けることも重要です。例えば、業務委託の場合には「面接」「選考」ではなく「面談」「打ち合わせ」、「労働時間」ではなく「稼働時間」、「給与」ではなく「報酬」といった表現が正しいです。細かく感じるかもしれませんが、契約書・発注書・社内文書での用語の不統一は、偽装請負を疑われる材料になり得ます。下表で正しい使い分けを整理しておきましょう。雇用・派遣契約での表現業務委託契約での表現面接・選考面談・打ち合わせ採用契約・締結労働時間・勤務時間稼働時間給与・賃金報酬・委託料休日・休暇稼働日・非稼働日退職契約終了・契約満了指示・命令依頼・要望フリーランス新法(2024年11月施行)への対応ポイント2024年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法/フリーランス保護新法)が施行されました。フリーランスへの業務委託を行うすべての企業に新たな義務が課されており、契約書・発注実務の見直しが不可欠です。偽装請負の論点とは別軸ですが、契約・運用ルールに同時に影響します。フリーランス新法の概要と適用される企業フリーランス新法は、フリーランス(個人事業主・一人法人など)と発注事業者の間の取引を適正化し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的としています。発注側の義務は企業規模により2段階に分かれます。従業員を1人以上雇用する企業(特定業務委託事業者)取引条件の明示・60日以内の報酬支払・募集情報の的確な表示・ハラスメント対策の体制整備など、すべての義務が適用される従業員を雇用しない個人事業主・一人法人(業務委託事業者)取引条件の明示義務のみが適用される業務委託契約書に追加すべき項目法3条で、フリーランスへの業務委託時には、書面または電磁的方法(メール・SNSメッセージ等)での取引条件の明示が義務化されました(口頭明示は不可)。明示すべき項目は以下の通りです。委託する業務の内容報酬の額報酬の支払期日業務委託事業者・フリーランスの名称業務委託をした日給付を受領する、もしくは役務の提供を受ける日給付を受領する、もしくは役務の提供を受ける場所検収完了日既存の業務委託契約書がこの8項目をすべて満たしているか、改めて確認しましょう。発注時に未定の項目がある場合は、未定である旨と決定予定日を明示し、決定後すぐに追加で書面化することが認められています。報酬支払い・ハラスメント対策の体制整備法4条で、報酬は給付を受領した日から起算して60日以内に支払うことが義務付けられました。これは下請法の60日以内ルールと同等ですが、適用範囲がフリーランス取引全般に拡大されています。既存の支払いサイト(例:月末締め翌々月末払い)が60日を超えていないか確認が必要です。また、法14条で、フリーランスへのハラスメント対策の体制整備が義務化されました。具体的には、相談窓口の設置・ハラスメント発生時の対応手順の整備・周知などが求められます。社内のハラスメント対応規程を、フリーランス(特定受託業務従事者)にも適用される形に拡張しましょう。違反時には、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省による指導・勧告・命令の対象となり、命令違反は50万円以下の罰金が科せられます。稼働中の運用で偽装請負を防ぐ3つのポイント契約書で適切に取り決めても、稼働中の運用が雑だと偽装請負と判断されてしまいます。契約と実態の整合を保ち、かつ受託者が成果を発揮できる環境を整えるために、以下の3ポイントを意識しましょう。ポイント1:業務の見える化と委託範囲の合意業務の進捗・成果物の状態を定期的に確認できる仕組みを作りましょう。週1回の進捗共有ミーティング、共有ドライブでの成果物管理、月次の作業報告など、形式は何でも構いません。重要なのは「指揮命令」ではなく「成果物の確認」として運用することです。また、社内のメンバーに業務委託という契約形態を周知し、受託者を社員と同じように扱わないよう徹底しましょう。「朝礼に呼ぶ」「社内Slackに常駐させる」「他の業務を口頭で頼む」といった行為は、悪気なく偽装請負のリスクを生みます。ポイント2:指示の出し方と距離感の保ち方発注者と受託者の間で、適切な「距離感」を保つことが偽装請負回避の鍵です。具体的には、業務に関する依頼や調整は、契約時に合意した範囲内で「成果物のすり合わせ」として行い、作業手順までは指示しないよう注意しましょう。実務上は、以下のOK/NGの線引きを社内で共有しておくと判断に迷いません。状況OKな依頼NGな依頼(偽装請負リスク)進捗確認「来週の打ち合わせまでに第一稿をいただけますか」「明日朝9時に進捗報告してください」仕様変更「成果物の仕様を見直したいので、別途相談させてください」「この部分のコードを今日中に修正してください」稼働時間「打ち合わせは火曜10時はいかがですか(双方合意)」「平日10〜18時は稼働してください」業務追加「契約範囲外の業務が発生したので、追加発注書を出します」「ついでにこれもお願いします」(無償依頼)また、契約範囲外の業務が発生した場合は、必ず事前に相談・追加発注を行い、双方合意のもとで動き出せるようにしましょう。ポイント3:チーム内コミュニケーション設計受託者の稼働時間や曜日は社内メンバーと異なる場合が多いため、連絡頻度・連絡手段・レスポンス時間の目安を事前に合意しておきましょう。「メールは24時間以内に返信」「Slackは平日10〜18時のみ」など、ルールを契約時に決めておくと無用な摩擦が減ります。一方で、社内メンバーと同じ感覚での関わり方は禁物です。受託者は独立した事業者であり、複数のクライアントを同時に持つのが通常です。「社内人材と同じ伝達」を意識するのではなく、「対等なビジネスパートナー」として接することが、長期的な信頼関係と偽装請負回避の両立につながります。まとめ業務委託で偽装請負と判断されるかは、契約書の名称ではなく業務の実態で決まります。回避するためには、3つのレイヤーを同時に整えることが必要です。契約:厚労省告示37号の3要件を満たす契約書を作成する運用:稼働中も指揮命令を避け、距離感を保つ法令対応:フリーランス新法の8項目明示・60日以内支払・ハラスメント対策を実装するこれらは独立したタスクではなく、相互に関連しています。契約書だけ整えても運用が雑なら偽装請負と判断され、運用だけ気をつけても契約書が不十分ならフリーランス新法違反になります。3つすべてを抜け漏れなく整えることが、適法かつトラブルなく外部人材を活用する鉄則です。マイナビProfessionalのご紹介「業務委託契約が偽装請負と判断されないか不安」「フリーランス新法対応で何を更新すべきか分からない」「外部人材を受け入れる契約・運用ルールを整備したい」——こうした課題は、契約書のテンプレートを揃えるだけでは解決しません。自社の業務実態に合った契約・運用設計が必要です。マイナビProfessionalは、6万人超のプロ人材データベースから、人事・労務・契約実務に精通したプロ人材をご提案するサービスです。コンサルティングだけでなく、業務委託契約の適正化からフリーランス新法対応・社内体制構築まで、戦略立案から実務実行までを一気通貫で伴走支援します。外部のプロと協働する過程で、契約管理や外部人材マネジメントのノウハウが社内に蓄積され、将来的な内製化にもつながります。「まずは契約書の妥当性をチェックしたい」「フリーランス新法への対応状況を確認したい」など、課題が明確でない段階でも構いません。サービス資料・支援事例集をご用意していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。