フリーランス保護新法とは何か?企業は何をすべき?フリーランス新法(正式名称: 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律。フリーランス・事業者間取引適正化等法とも呼ばれます)は、2024年11月1日に施行された法律です。フリーランスへ業務委託を行うすべての企業が対象で、資本金の大小は問いません。発注事業者には、取引条件の書面明示・60日以内の報酬支払・ハラスメント対策など最大7つの義務が課されています。違反すると公正取引委員会等の調査・指導・勧告・命令・企業名公表・最大50万円の罰金の対象となります。本記事では、自社が対象になるかの判定軸から、7つの義務の中身、下請法・取適法(改正下請法)との違い、罰則、企業がとるべき実務対応の流れまでを、人材サービス事業者の視点で整理します。フリーランス新法対応を「コスト」で終わらせず、外部人材を戦力化する戦略視点も併せて提示します。本記事でわかることフリーランス新法の正式名称・施行日・対象企業「フリーランス」「発注事業者」の法律上の定義発注企業に課される7つの義務の中身下請法・取適法(改正下請法)との違い違反時の罰則と行政の対応フロー企業が今すぐとるべき実務対応のチェックリスト法対応の延長で外部人材を戦力化する視点フリーランス新法とはフリーランス新法は、フリーランスへ業務委託を行う発注事業者に対し、取引条件の明示や報酬支払期日の設定など、最大7つの義務を課す法律です。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」で、「フリーランス保護新法」「フリーランス法」とも呼ばれます。2023年4月28日に国会で成立、同年5月12日に公布され、2024年11月1日に施行されました。これまでフリーランスを保護してきた下請法は資本金1,000万円超の発注者しか対象としていませんでしたが、フリーランス新法は資本金の大小を問わず、フリーランスへ業務委託を行うすべての発注事業者に適用されます。中小企業・ベンチャー企業も対象です。違反すると公正取引委員会・厚生労働省などの調査を受け、指導・助言、勧告、命令、企業名公表へと段階的に進みます。命令違反となった場合は50万円以下の罰金が科されます。以下、対象企業の判定軸、7つの義務の中身、下請法との違い、罰則、実務対応の順に整理します。フリーランス新法の対象フリーランス新法では、保護される側を「特定受託事業者」、業務を委託する側を「特定業務委託事業者」と定義しています。一般的な「フリーランス」「発注企業」の呼び方とは法律用語が異なるため、まず定義を整理します。特定受託事業者(=フリーランス)従業員を使用しない、個人または一人法人(代表者以外の役員も従業員もいない法人)が該当します。デザイナー・エンジニア・ライターのような典型例だけでなく、建設業・配送業・理容師・美容師・インストラクター・営業職など、業種を問わず該当します。ここでいう「従業員」とは、週20時間以上かつ31日以上の継続雇用が見込まれる労働者を指します。一時的なアルバイト・短時間勤務者は従業員にはカウントされません。特定業務委託事業者(=発注事業者)従業員を使用する事業者で、フリーランスへ業務委託を行うすべての法人・個人事業主が該当します。資本金の大小は一切問いません。「下請法は資本金1,000万円超の発注者のみが対象だったから、うちは関係ない」と判断していた企業も、フリーランス新法では対象となるケースが多くあります。また、業務委託期間によって課される義務の数が変わります。1ヶ月未満の単発委託では4項目、1ヶ月以上では6項目、6ヶ月以上では7項目すべてが適用されます。継続的な業務委託ほど義務が増える設計です。発注企業に課される7つの義務フリーランス新法では、発注事業者の規模(従業員の有無)と業務委託期間に応じて、最大7つの義務が課されます。各義務は公正取引委員会・中小企業庁が所管する「取引の適正化」と、厚生労働省が所管する「就業環境の整備」に分かれます。No.義務の内容適用要件所管1書面等による取引条件の明示全ての業務委託公取委・中企庁2報酬の60日以内支払全ての業務委託公取委・中企庁37つの禁止行為(受領拒否・報酬減額・買いたたき等)1ヶ月以上の継続業務委託公取委・中企庁4募集情報の的確な表示募集を行う場合厚生労働省5育児介護等への配慮6ヶ月以上の継続業務委託厚生労働省6ハラスメント対策の体制整備全ての業務委託厚生労働省7中途解除・不更新の30日前予告6ヶ月以上の継続業務委託厚生労働省出典:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」、厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」義務1:書面等による取引条件の明示業務委託を行った時点で、ただちに書面または電磁的方法(メール・チャット等)で取引条件を明示する義務があります。口頭のみの明示はNGです。明示すべき項目は9つあり、給付の内容・報酬の額・支払期日・発注者と受注者の名称・委託日・受領日・受領場所・検査完了日・金銭以外の支払方法、です。義務2:報酬の60日以内支払成果物を受け取った日、または役務提供を受けた日から起算して60日以内のできる限り早い日に支払期日を設定し、その期日内に報酬を支払う必要があります。一般的な「月末締め翌々月末払い」では60日を超える可能性があるため、支払サイトの見直しが必要なケースがあります。義務3:7つの禁止行為(1ヶ月以上の継続業務委託)1ヶ月以上の継続的な業務委託では、受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき・物品強制購入や役務利用強制・経済上の利益提供の強制・不当な給付内容の変更ややり直し、の7つが禁止されます。下請法と同様の禁止事項がフリーランス取引にも拡張されたかたちです。義務4:募集情報の的確な表示フリーランス募集を広告・求人サイト・自社サイト等で行う場合、虚偽の表示・誤解を招く表示をしてはなりません。報酬や業務内容は正確かつ最新の状態に保つ必要があります。義務5:育児介護等への配慮(6ヶ月以上)6ヶ月以上の継続業務委託では、フリーランスから育児・介護等と業務の両立に関する申出があった場合、必要な配慮を行う義務があります。配慮できない場合は理由の説明が必要です。義務6:ハラスメント対策の体制整備発注事業者は、フリーランスへのハラスメントを行わない方針の明確化・周知・啓発、相談窓口の整備、ハラスメント発生時の迅速な対応の3点を整備する義務があります。社員向けハラスメント体制をそのまま流用するのではなく、フリーランスを対象に含めた体制設計が必要です。義務7:中途解除・不更新の30日前予告(6ヶ月以上)6ヶ月以上の継続業務委託を中途解除する場合、または更新しない場合は、原則として30日前までにフリーランスへ予告しなければなりません。予告日から解除日までの期間にフリーランスから理由開示の請求があった場合は、理由を開示する必要があります。【関連記事】契約書面の具体的な作成方法は『業務委託の偽装請負とは|判断基準と契約書・運用で防ぐ7つのポイント』、報酬設定の考え方は『フリーランスとの報酬交渉ガイド|発注側が押さえる5ステップとメール例文』で解説しています。下請法・取適法(改正下請法)との違い「うちは資本金1,000万円以下だから、これまでも下請法の対象外だった。フリーランス新法も関係ないのでは」という誤解が現場でしばしば見られます。結論から言えば、フリーランス新法は資本金要件を持たないため、下請法対象外だった企業も対象になります。観点下請法(取適法)フリーランス新法対象となる発注者資本金1,000万円超の法人従業員を使用する全ての事業者(資本金不問)対象となる受注者資本金1,000万円以下等の下請事業者従業員を使用しない個人または一人法人主な禁止事項受領拒否・報酬減額等下請法と同様+ハラスメント対策・配慮義務所管公正取引委員会・中小企業庁公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省施行・改正2026年1月に取適法へ改称・要件強化2024年11月1日施行2026年1月からは下請法が「取適法(改正下請法)」へと改称・改正され、支払条件や価格交渉のルールがより厳格化されます。法人取引と個人取引の両方で発注実務を見直す必要があります。つまり、フリーランス新法と取適法は補完関係にあり、どちらが対象になるかは「相手が誰か(一人社長を含む個人か、資本金を持つ法人か)」と「自社の資本金」によって決まります。自社の取引先を棚卸しし、それぞれにどの法律が適用されるかを整理することが第一歩です。違反時の罰則と行政の対応フローフリーランス新法に違反した場合、ただちに罰金が科されるわけではありません。行政の対応は以下の段階的フローを踏みます。段階内容実務上のインパクト①調査公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省による事実関係の調査報告命令・立入検査も可能②指導・助言違反の改善のための指導が行われる社内通達レベルで対応可能③勧告重大または継続的な違反に対し、改善を勧告対外的なレピュテーションリスクが発生④命令勧告に従わない場合、必要な措置をとるよう命令命令違反は罰金対象⑤企業名公表命令の事実とともに企業名が公表されるブランド・採用・取引への直接影響⑥罰金命令違反・検査拒否等に対し、50万円以下の罰金金額より企業名公表のダメージが大きい実務上もっとも重いのは「企業名公表」です。罰金額自体は50万円以下ですが、公表されればコーポレートサイトのプレスリリースで対応せざるをえなくなり、採用活動・取引先との信頼関係・既存フリーランス人材のリテンションすべてに影響します。罰金額の小ささを理由に対応を後回しにすべきではありません。【関連記事】業務委託で起こりがちな失敗パターンとリスク対策は『業務委託で起こりやすいトラブル事例10選|原因と防ぐための7つの対策』にまとめています。企業がとるべき実務対応の流れフリーランス新法対応のために、企業がとるべき実務ステップを7つに整理しました。社内チェックリストとしてご活用ください。ステップ1:取引先棚卸しフリーランス新法の対象となる取引先(=従業員を使用しない個人・一人法人)をすべて洗い出す。ステップ2:発注フォーマット整備9項目の取引条件を漏れなく記載できる書面または電磁的フォーマット(発注書テンプレート)を整備する。ステップ3:支払サイトの見直し「成果物受領日から60日以内」を満たす支払フローへ運用変更する。ステップ4:募集情報の正確性チェック求人ページ・LP・SNS等のフリーランス募集情報を、現行の報酬・条件と整合しているか棚卸しする。ステップ5:ハラスメント対策フリーランスを対象に含めたハラスメント方針の策定・周知、相談窓口の設置、社内研修を行う。ステップ6:6ヶ月以上の継続契約への配慮義務対応育児・介護等の申出があった場合の対応フローを設計する。ステップ7:社内研修法務・人事・調達・現場の発注担当者に向けてフリーランス新法の社内研修を実施し、運用を定着させる。ここまでの7ステップは、社内に法務・人事の専任体制が整っている企業であれば自社対応可能です。ただし、契約フォーマットの整備・運用・社内研修を一気通貫で内製化するのが難しい企業も少なくありません。マイナビProfessionalでは、人事・法務・調達領域のプロ人材による伴走支援を通じて、フリーランス新法対応の制度設計から契約実務の整備、社内運用の定着までをご支援しています。実務担当者の負荷を最小化しながら、自社内に運用ノウハウを蓄積できる体制づくりが可能です。【関連記事】実務で気をつけるべきポイントは『個人事業主と業務委託契約を結ぶ前に|法人発注との違い・偽装請負・契約書チェックリスト』を参考にしてください。法対応を“守り”で終わらせない|外部人材活用を戦略リソースに変える視点フリーランス新法への対応は、確かに発注事業者にとって新たな運用コストを生みます。書面化、支払サイト見直し、ハラスメント体制整備──いずれも社内リソースを必要とする取り組みです。しかし、ここで「規制対応」のレイヤーで思考を止めてしまうと、フリーランス新法対応はただの守りのコストで終わります。法対応の延長線上で外部人材活用の戦略性を高めることで、コストを投資へと転換できます。人手不足と労働人口減少が深刻化する中、外部人材(プロ人材)の活用は採用戦略を補完する不可欠な選択肢です。専門スキルの獲得、固定費の最適化、コア業務への選択と集中、柔軟な体制調整──いずれも、雇用ではなく業務委託というかたちで実現できる戦略リソースです。ただし、外部人材は社員の代替ではありません。「雇用」ではなく「取引」であり、給与ではなく報酬を受け取る、自律性と独立性を持つ対等なパートナーです。指揮命令ではなく、スキルに着目した協働関係を設計することで、初めて外部人材の価値が引き出されます。【関連記事】外部人材活用の進め方は『はじめての外部人材活用|業務委託契約からチーム連携までの準備ガイド』、戦略的に活かす視点は『VUCA時代の外部人材活用|人材自前主義からの脱却を成功に導く2つのポイント』で詳しく解説しています。まとめフリーランス新法は2024年11月1日に施行された、フリーランスへ業務委託を行う全企業に関わる法律です。本記事のポイントを3点でリマインドします。対象は資本金不問下請法対象外だった中小企業も含め、従業員を使用してフリーランスへ業務委託を行う全ての発注事業者が対象です。7つの義務取引条件の書面明示、60日以内の報酬支払、ハラスメント対策など、業務委託期間に応じて最大7項目の義務が課されます。罰則の実質的インパクトは企業名公表罰金額は50万円以下ですが、実務上もっとも重いのは命令違反時の企業名公表です。法対応を「守りのコスト」で終わらせるのではなく、その先で外部人材を戦力化する戦略リソースに変える視点が、人手不足時代の競争力につながります。マイナビProfessionalのご紹介「フリーランスとの取引を見直したいが、何から手をつければいいかわからない」「外部人材を活用したいが、社内に適切な業務設計や契約運用のノウハウがない」——そんな課題を感じている方も多いのではないでしょうか。マイナビProfessionalは、人事・組織領域に精通したプロ人材が、外部人材活用の制度設計から契約実務の整備、協働体制の構築まで一気通貫で支援するサービスです。6万人超のプロ人材データベースから、貴社の課題に最適な人材を選定。さらにマイナビ専任チームが伴走することで、プロジェクト終了後も社内で自走できる体制づくりを支援します。まずはサービス資料をご覧いただき、お気軽にご相談ください。