DXとは何か?企業はどう進めればいい?DX人材とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革する専門人材です。経済産業省・IPAが2022年に策定した「DX推進スキル標準(DSS-P)」では、ビジネスアーキテクト/デザイナー/データサイエンティスト/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティの5類型に整理されています。一方で、IPAの「DX動向2024」によると、DX人材が「大幅に不足」と答えた企業は62.1%にのぼり、過去最高を更新しました。確保には中途採用社内育成(リスキリング)外部プロ人材活用の3手段があり、自社のフェーズに応じて組み合わせるのが現実的な打ち手です。この記事では、DX人材の定義から5類型・必要スキル・不足の現状・確保3手段までをワンストップで整理します。本記事でわかることDX人材の定義と、IT人材・全社員リテラシーとの違いDX推進スキル標準(DSS-P)が定める5類型と、それぞれの役割DX人材に求められる5つのスキルカテゴリ人材不足の現状(IPA「DX動向2024」の数値)確保の3手段(採用・育成・外部活用)の比較と組み合わせ方DX人材とは|デジタル変革を主導する専門人材DX人材とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革する専門性を持った人材のことです。単にITに詳しいだけでなく、自社の事業・業務を深く理解した上で、データとデジタル技術を使って新しい価値を生み出すことが求められます。DX人材とよく混同されるのが「IT人材」です。IT人材は既存システムの開発・運用・保守を担う技術者を指すのに対し、DX人材はデジタル技術を使って事業そのものを変革する点が異なります。前者の対象が「システム」、後者の対象が「ビジネス」と整理すると分かりやすいでしょう。また、経済産業省・IPAが策定した「デジタルスキル標準」では、DX人材の役割を2つの標準で整理しています。全てのビジネスパーソンが身につけるべき基礎的な知識・マインドを示す「DXリテラシー標準(DSS-L)」と、DXを推進する専門人材に求められる役割・スキルを示す「DX推進スキル標準(DSS-P)」です。本記事で解説するDX人材は、後者のDSS-Pが定義する専門人材を指します。DX人材の5類型と役割|DX推進スキル標準(DSS-P)経済産業省とIPAが2022年12月に公表した「DX推進スキル標準(DSS-P)」では、DXを推進する中核人材を5つの類型に整理しています。それぞれの役割を順に見ていきます。【1】ビジネスアーキテクトDX推進の目的を設定し、関係者を調整しながら協働関係を構築して、目的実現まで一貫してリードする人材です。経営層と現場、IT部門と事業部門の橋渡し役を担います。新規事業開発・既存事業の高度化・社内業務の効率化など、複数のロールに分かれます。DX動向2024調査では、5類型の中で最も不足感が強い類型として挙げられています。【2】デザイナービジネスの視点と顧客・ユーザーの視点をふまえて、製品・サービスの方針や開発プロセスを定め、デザインする人材です。UI/UXデザインだけでなく、サービス全体の体験設計を担う点が特徴です。【3】データサイエンティストデータを活用した業務変革や新規ビジネスを実現するため、データの収集・解析・活用の仕組みを設計・実装・運用する人材です。AI活用が広がる中で、ビジネスアーキテクトに次いで不足感が強い類型です。【4】ソフトウェアエンジニアデジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステム・ソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材です。クラウドエンジニア/SREなど、現代的なロールに細分化されています。【5】サイバーセキュリティ業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材です。デジタル化が進むほどセキュリティ対策の重要性が高まり、5類型の中でも独立した位置づけを得ています。これら5類型は、それぞれが独立して動くのではなく、相互に連携しながらDXを推進します。1人で複数類型を兼任するケースもあれば、複数メンバーで1類型を分担することもあるため、自社のDXフェーズに応じた配置設計が重要になります。DX人材に求められる5つのスキルカテゴリDSS-Pでは、5類型に共通して求められるスキルを5つのカテゴリに整理しています。自社のDX人材を採用・育成する際の、スキル設計の指針として活用できます。スキルカテゴリ1:ビジネス変革戦略・マネジメント、システム/ビジネスモデル・プロセス、デザインの3領域で構成されます。DXの目的を経営戦略と連動させ、変革を実行に移すための土台となるスキルです。スキルカテゴリ2:データ活用データ・AIの戦略的活用、AI・データサイエンス、データエンジニアリングの3領域で構成されます。データドリブンな意思決定の基盤となるスキル群です。スキルカテゴリ3:テクノロジーソフトウェア開発、デジタル技術の理解と活用に関するスキルです。2024年7月のDSS-P ver.1.2改訂では、生成AIへの向き合い方・行動の起こし方が補記され、生成AIの利用スキルもこのカテゴリに含まれるようになりました。スキルカテゴリ4:セキュリティサイバーセキュリティ類型だけでなく、全ての類型に共通して必要となる基礎スキルです。デジタル環境におけるリスクマネジメントの観点から、最低限の理解が求められます。スキルカテゴリ5:パーソナルスキルリーダーシップ、コラボレーション、変化対応力など、変革をやり抜くための個人スキルです。技術スキルだけでは組織変革は進まないため、このカテゴリの軽視は失敗の原因になります。これらのスキルは、社員の現状スキルを棚卸しし、不足している領域を特定するチェックリストとしても使えます。自社で育成計画を立てる際の出発点として活用してください。DX人材不足の現状|IPA「DX動向2024」が示すリアルDX人材の不足は、ここ数年で一気に深刻化しています。IPA(情報処理推進機構)が2024年に発表した「DX動向2024」調査によれば、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と回答した企業は62.1%にのぼり、調査開始以来初めて過半数を超えました。2021年度調査の30.6%から、わずか3年で2倍に拡大した計算です。不足が特に深刻なのは、5類型の中でも上流側を担う2つの類型です。同調査ではビジネスアーキテクトが41.9%で最多、続いてデータサイエンティストが19.1%となっており、戦略・企画とデータ活用の両輪で人材が枯渇している実態が読み取れます。なぜ不足するのか不足の背景には複数の要因があります。第一に、DX人材に求められるスキルが、技術知識・事業理解・変革推進力と多面的で、育成に時間がかかること。第二に、日本企業が長年ゼネラリストを重視してきた人事制度のため、DXに必要な専門性を持つ人材プールが薄いこと。第三に、優秀なDX人材は外資系企業・スタートアップに流出しやすく、処遇面での競争力が低い企業ほど採用が難しいことです。放置するとどうなるかDX人材不足を放置することで生じるリスクは、単に「DXが進まない」だけにとどまりません。経済産業省が指摘する「2025年の崖」では、レガシーシステムの維持コストが膨張し、新たな価値創出に投資できない状態が続くと、年間最大12兆円規模の経済損失が発生すると試算されています。人材不足は、この崖を加速させる要因になります。一方で、IPAの同調査によれば、自社に必要なDX人材像を「設定している」企業は、設定していない企業より人材不足の体感が低い傾向にあります。つまり、何を求めるかを明確にしている企業から順に、不足を解消できているということです。次のセクションでは、その確保手段を整理します。DX人材を確保する3つの手段|採用・育成・外部プロ人材活用DX人材を確保する手段は、大きく3つに整理できます。それぞれに向き不向きがあるため、自社のDXフェーズに応じて組み合わせるのが現実的です。手段1:中途採用DX経験者を正社員として採用する方法です。長期的なコミットを期待できる反面、市場で競合する企業が多く、採用難易度は年々上がっています。年収レンジも上昇しており、特にビジネスアーキテクトやデータサイエンティストの採用には500万〜1,500万円超の年収提示が必要なケースもあります。応募が集まらない場合はダイレクトリクルーティングなどの能動的アプローチが有効です。手段2:社内育成(リスキリング)既存社員にデジタルスキルを再習得させる方法です。事業理解の深さで採用組より優位に立てる一方、本格的なDX人材化には1〜3年単位の時間が必要で、即効性に欠けます。経産省の「マナビDX」やDSS-Pの共通スキルカテゴリを指針に、座学とOJTを組み合わせるのが定石です。手段3:外部プロ人材活用(業務委託)即戦力のフリーランス・副業人材を業務委託で活用する方法です。週1日からの稼働も可能で、スモールスタートできるのが強みです。社員と協働させることでノウハウ移転も期待でき、内製化への橋渡しとして機能します。一方、契約管理や情報共有の仕組みづくりが必要です。<3手段の比較>観点中途採用社内育成外部プロ人材活用立ち上がり中(採用に3〜6ヶ月)遅い(1〜3年)速い(数週間)コスト構造固定費(年収+保険)研修費+業務時間変動費(稼働量に応じる)ノウハウ蓄積◎ 社内に残る◎ 社内で創出△ 仕組み次第(要設計)向くフェーズDX中核ロールを長期確保したい段階既存社員の底上げ/継続的内製化立ち上げ期/専門ロール先行確保代表的な不安採用市場で競合敗北時間がかかりすぎるノウハウが残らない結論として、3手段はどれか1つを選ぶものではなく、自社の状況に応じて組み合わせるのが定石です。たとえば「立ち上げ期は外部プロ人材で速度を出し、並行して社員のリスキリングを進め、軌道に乗ったら中途採用で中核ロールを補強する」といった移行設計が現実的です。外部プロ人材活用が機能するシーン|社内育成と組み合わせる発想外部プロ人材活用は、3手段の中でも特に「立ち上げ期の速度」と「専門ロールの即戦力確保」で強みを発揮します。具体的に機能する3つのシーンを整理します。シーン1:不足する専門ロールの先行確保ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなど、5類型の中で特に採用が難しいロールを、業務委託で先行確保するパターンです。週2日稼働でも、戦略立案や分析設計で十分な成果を出せるケースが多くあります。シーン2:社内育成のメンター・伴走役社員のリスキリングを進める際、外部プロ人材を「メンター」として配置するパターンです。OJT形式で社員が外部人材と協働することで、座学では身につかない実践知が移転されます。リスキリングの最大の難所である「学習と業務のつながりの実感」を、現場の協働で生み出せます。シーン3:プロジェクト型の山場対応新規事業立ち上げや基幹システム刷新など、特定期間に専門人材が大量に必要になるフェーズで、業務委託をスポット投入するパターンです。終了後は通常体制に戻れるため、固定費を膨らませずに山場を越えられます。ただし、外部活用には注意点もあります。「全て外注して終わり」では、ノウハウが社内に残らず、契約終了とともにDX推進力が消えてしまいます。重要なのは、社員が外部プロ人材と同じプロジェクトに参画し、業務分担を通じてノウハウを蓄積する仕組みを設計することです。成果物の共有形式を決める、定例会で意思決定の背景を残す、現場担当者がメイン窓口を担当する——こうした仕組みが、外部活用を「内製化への橋渡し」に変えます。まとめ|自社のDXフェーズに合った人材戦略をDX人材は、経済産業省・IPAのDX推進スキル標準(DSS-P)が定める5類型——ビジネスアーキテクト/デザイナー/データサイエンティスト/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティ——で整理できます。約62%の企業が大幅な不足を抱える中、確保には中途採用・社内育成・外部プロ人材活用の3手段を組み合わせるのが現実的な打ち手です。自社で着手するための3ステップを整理すると、以下のとおりです。自社に必要なDX人材像を定義するDSS-Pの5類型と5スキルカテゴリを使って、自社のDXフェーズに必要な人材像を言語化します。「漠然とDX人材が欲しい」状態から「ビジネスアーキテクト的な役割が、ビジネス変革とパーソナルスキルの両方で必要」と具体化することが第一歩です。不足するロールを特定する既存社員のスキルマップを作成し、不足する類型・スキルカテゴリを特定します。全類型を一気に揃える必要はありません。優先順位を絞ることが重要です。3手段の組み合わせを設計する立ち上げ期は外部プロ人材で速度を出し、社内育成を並走させ、軌道に乗ったら中途採用で中核ロールを補強する——というように、自社のフェーズに応じた組み合わせを設計します。DX人材戦略は一度設計したら終わりではなく、フェーズが進むごとに見直す必要があります。本記事の枠組みを、自社の人材戦略を点検する際のチェックリストとして活用してください。マイナビProfessionalのご紹介「DXを推進したいが、どの人材をどう配置すればいいかわからない」「プロデューサーやデータサイエンティストを採用したくても、なかなか見つからない」——そんな課題を感じていませんか?マイナビProfessionalは、DX推進に必要な専門人材を、戦略立案から実務実行まで一気通貫で提供するプロ人材サービスです。6万人超のデータベースから、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなど、貴社のDXフェーズに最適な人材をご提案します。最短3週間で協働開始できるため、「今すぐDXを動かしたい」というスピード感にも対応。さらに、マイナビ専任チームが伴走し、プロ人材と社員が協働する中でノウハウの内製化も実現します。課題が整理できていない段階からでもサポートいたします。まずはサービス資料をご覧いただき、お気軽にご相談ください。