新規事業企画書には、事業の目的・ビジョンターゲット顧客市場・競合分析商品・サービス概要資金計画・収益シミュレーション実現までのスケジュールの6項目を記載します。本記事では、この必須6項目を解説したうえで、そのまま転用できる項目別の記入例と、1枚にまとめるテンプレート構成まで紹介します。最も重要なのは「なぜこの事業を行うのか」という目的の明確化です。銀行融資や社内承認を得るには、官公庁など信頼性の高いデータを根拠に収益予測を示しましょう。リスクと対策まで含めることで説得力が高まります。新規事業企画書とは|計画書との違い新規事業企画書とは、新しいビジネスを始める前に、目的・ターゲット・市場分析・収益予想などをまとめ、関係者に説明するための書類です。テンプレートに沿えば、後述の6項目で過不足なく作成できます。融資を必要としない小さな個人事業などの例外を除けば、新規事業の立ち上げ前に必ず作成しておきたい書類です。似た書類に「事業計画書」があります。両者は作成タイミングと内容が異なります。新規事業企画書事業計画書作成タイミング事業の立ち上げ前事業の開始後内容実績がない状態で将来の見通しを書く。目的・顧客層・資金・収益予想を記載運用中の事業の短中期の将来を、過去実績を根拠に予測【関連記事】計画書(事業開始後の数値計画)の作り方は別記事「事業計画書の作り方|新規事業で押さえる必須9項目と書けない5つの原因」で詳しく解説しています。本記事は立ち上げ前の企画書に絞って解説します。新規事業企画書に書く必須6項目新規事業企画書に書くべき必須項目は、次の6つです。項目書く内容(要点)1. 目的・ビジョンなぜこの事業を行うのか。自社の課題を挙げ、それを解決する目的を示す(最重要)2. ターゲット誰に売るのか。性別・年齢・職業・年収などのデモグラフィック変数で明確化3. 市場・競合分析市場規模・競合の現状・顧客ニーズ・業界課題を調査して提示4. 商品・サービス概要課題と目的を受け『だからこの商品を提供する』という解決策を記載5. 資金・収益シミュレーション必要資金と収益予想。官公庁など信頼性の高いデータを根拠にする6. スケジュール事業開始までの具体的な計画。実現可能性を示す①目的・ビジョン最も大切となるのが、新規事業の目的・ビジョンです。「なぜ新規事業を行うのか?」が伝わらなければ、そこで話は終わってしまいます。新規事業企画書では、自社の現状や課題を挙げ、それを受ける形で新規事業の目的やビジョンを説明します。たとえば、コーヒー豆の卸業者が新規事業としてカフェを営みたい場合、以下のような内容が考えられるでしょう。【課題例】ここ数年、仕入れ先は豊富にあるが、卸先の確保に苦慮している【新規事業の目的例】自社直営のカフェによりコーヒー豆の安定した消費先を作り、その売上を新たな収益の柱とする。将来的に「○○カフェのコーヒー豆」としてブランドを活かした通販販売を行うことも視野に入れる。②ターゲットどのような顧客層をターゲットにした新規事業なのかを明確にすることも重要です。カフェの例であれば、ある程度安定した収入を持つ人に向けた高級路線なのか、学生も歓迎の庶民派路線なのかで、事業の内容もまったく異なります。少なくとも以下の属性は検討し、メインとなるターゲット層の明確化を進めましょう。これらは、マーケティング戦略などの、市場細分化の切り口の一つである「デモグラフィック変数」と呼ばれる統計指標です。性別年齢層職業年収家族構成居住地域③市場・競合分析新規事業企画書では、自社がこれから乗り出そうとしている市場の分析結果も記載すべきです。ビジネスは、優れた商品・サービスを提供することはもちろんですが、消費者からの需要がなければ成立しません。将来性のある市場だと伝えることができれば、新規事業企画書の訴求力も強まります。少なくとも以下の内容については調査しておきましょう。市場全体の規模(業界の総売上)競合の規模・現状顧客のニーズ業界全体が抱える課題SDGsなど時勢にまつわる現状【関連記事】分析の精度を高めたい方は、「新規事業のフレームワーク8選|立ち上げフェーズ別の選び方と使い方を解説」で具体的な手法を確認することをおすすめします。④商品・サービス概要新規事業企画書のメインとなるのが、新ビジネスで取り扱う商品やサービスの概要説明です。ここまでの自社課題や新規事業の目的、想定するターゲット、市場や競合他社の現状といった内容を受け、「だからこそ、この商品(サービス)を提供します」といった解決策を記載します。この対応関係がズレてしまうと、新規事業企画書全体の説得力が失われてしまいますので注意しましょう。⑤資金・収益シミュレーション商品(サービス)を提供するために必要な事業資金の算出やビジネス運用後の予想収益も、新規事業企画書には欠かせない内容です。特に銀行融資など資金調達を目的としている場合、金銭面のシミュレーションが曖昧だと、机上の空論と判断されてしまう可能性もあります。新規事業企画書では、事業計画書と異なり既存の実績を提供できません。相手に「確かに納得できる」と判断されるための客観的な根拠が求められます。重要なのは、官公庁や業界最大手の団体が公表する信頼性の高い情報・数値を用いて計算することです。【関連記事】資金調達の選択肢として、「新規事業の助成金・補助金7選|違いと申請時の注意点を解説」活用も検討してみてはいかがでしょうか。⑥スケジュール新規事業開始までのスケジュールを含めた具体的な計画も、企画書に記載しておかなければいけません。新規事業企画書を提示する際、相手は「実際のところこれほどうまく進むのか?」と疑問に思っているものです。具体的なスケジュールまで伝えることで、実現可能な計画であると強く伝えることができます。前述のカフェの例でいえば、少なくとも以下にまつわる計画は求められるでしょう。物件の確保従業員の確保コーヒー以外の仕入れ先の確保業務内容のマニュアル化行政関係手続きの予定開店の周知方法開店予定日そのまま使える記入例|項目別サンプルここでは「コーヒー豆の卸業者が直営カフェを始める」ケースを例に、6項目の記入例を示します。自社の事業に置き換えてそのまま流用してください。項目記入例目的・ビジョン仕入れ先は豊富だが卸先確保に苦慮。直営カフェで安定消費先を作り新たな収益の柱とする。将来は自社ブランド豆の通販も視野ターゲット・30〜40代・年収500万円以上・近隣オフィス勤務。質の高い一杯に価値を感じる層市場・競合分析・商圏内のカフェ数と単価・テイクアウト需要・競合の弱み(豆の品質訴求が弱い)を整理商品・サービス自家焙煎の高品質豆を使った一杯と、店頭での豆販売を組み合わせた体験提供資金・収益・初期投資○○万円・月間来客○○人×単価○○円で○か月で黒字化。(出典は業界団体の統計)スケジュール・物件確保・内装・採用・マニュアル化・行政手続き・開店(○か月計画)各項目は「課題→解決策」の対応関係が一貫しているかを必ず確認します。ここがズレると企画書全体の説得力が失われます。1枚にまとめる企画書テンプレート構成社内承認の場では、まず1枚で全体像を伝えると意思決定が早まります。1枚企画書は次の4ブロックで構成します。詳細データは2枚目以降に添付すれば十分です。事業タイトルと概要:「○○の△△版」のように一言で伝わる表現にする課題と解決策:誰のどんな課題を、どう解決するかビジネスモデルと収益:仕入れから収益化までの流れを1枚の図で示す実行計画とKPI:スケジュールと、達成を測る指標(KPI)を置く作成ツールはPowerPointやGoogleスライドが汎用的です。ただしツールより内容の質が重要なので、まず1枚のドラフトを作り、フィードバックで精度を上げる進め方が効率的です。説得力を高める5つのポイント記載項目を埋めるだけでなく、次の5点を押さえると企画書の説得力が高まります。ポイント1:目的・目標は数値で明確化新規事業の目的や目標は、可能な限り明確に記載しましょう。単に「リスクヘッジのため」「新たな収益の確保」といった内容では説得力が十分ではありません。「5年以内に自社の売上の3割(○○○万円)を新規事業で占める」など、具体的な数値を交えると、相手に必要性を共有しやすくなります。ポイント2:現状の課題を理解しておく新規事業の実現にあたり、現状考えられる課題を洗い出しておくことも有効です。課題を明確化することで、非現実的なプランとなっていないかを再確認できます。課題の明確化により、非現実的なプランとなっていないかを再確認できます。 事業が動き出した後では、「ここまでの投資が無駄になる」と考えてしまい、撤退の判断も難しくなります。ポイント3:リスクを把握しておく新規事業企画書に説得力を持たせるための一工夫として、リスク(ネガティブな側面)を記載することも覚えておきましょう。聞こえのよい内容だけの新規事業企画書は、「見通しが甘い」「信用できない」と敬遠される場合があります。新規事業が順調に進まない未来についても想定し、その対策と、その場合でも見込める収益を訴求しましょう。ポイント4:自社の強みを活かした差別化説得力を持たせるために、新規事業の戦略立案時には自社ならではの強みを打ち出すことも必要です。新規事業では、すでにその市場でビジネスをしている競合他社や、将来的に参入してくる後発他社と争います。そこで、「なぜ自社の新規事業が競合や後発を打ち負かせるのか?」を説明できるだけの差別化が求められます。「コーヒー豆卸業者としての30年の経験を活かし、他社よりも安く美味しい1杯を提供するカフェ」のように、自社だからこその価値を考えてみてください。企画書が魅力的に仕上がるだけでなく、新規事業開始後のビジネス成功のカギともなり得ます。ポイント5:人材・体制は確保できているか見落としがちなポイントとして、新規事業をはじめるために必要な人材の確保や体制づくりが挙げられます。アイディア自体は優れていても、人的リソースの観点から実現が難しい計画書も散見されます。新規事業を担う人材には、その分野の知識や経験、リーダーシップなど、さまざまなスキルが求められます。【関連記事】「新規事業立ち上げに必要なメンバーの選び方まとめ!人材獲得やスキルのポイント解説」無料テンプレ・PowerPointを使うときの注意点ネット上には無料の企画書テンプレートやPowerPoint雛形が多数あります。便利な一方で、次の点に注意してください。テンプレを「埋めるだけ」で思考停止しない。項目の意味を理解して書く自社の事業内容や提案相手に合わせ、不要な項目は削り、必要な項目は足してカスタマイズするテンプレ通りの体裁より、相手が納得できる根拠と論理の一貫性を優先する企画書作成にプロ人材という選択肢説得力のある企画書には、市場分析・収益シミュレーション・差別化戦略など多岐にわたる専門知識が求められます。社内に新規事業の経験者がいない、本業と並行して時間を割けない——そんなときは、新規事業開発に精通したプロ人材の活用が選択肢になります。「週1回の壁打ち」「特定セクションだけ依頼」といったスモールスタートも可能です。マイナビProfessionalのご紹介マイナビProfessionalは、新規事業開発に精通したプロ人材が、企画書作成から事業立ち上げまで伴走支援するサービスです。6万人超のプロ人材データベースから最適な人材を選定し、最短3週間で協働を開始。専任チームが進行管理まで担うため、初めての外部人材活用でも安心です。「まずは企画書の方向性を相談したい」段階でも構いません。サービス資料をご覧のうえ、お気軽にご相談ください。