この記事でわかること営業戦略と営業戦術の違いと、なぜ戦略が重要なのか 営業戦略を立てる具体的な5つのステップと実践方法 戦略立案に役立つ4つのフレームワークの使い方「売上を上げたい」「新規顧客を増やしたい」「顧客単価をあげたい」その実現には、明確な営業戦略が欠かせません。しかし現場では、日々の顧客対応や事務処理に追われ、戦略をじっくり練る時間が取れないのが実情です。数字の管理はできても、組織として“どう攻めるか”という具体策が曖昧なままで、結果として、部下やチームへの指示も統一されず、現場の動きにバラつきが生じてしまうことがあります。戦略なしの状態で走り続けると、ノウハウの属人化といった非効率な行動が常態化し、「頑張っているのに成果が出ない」状況に陥りがちです。一方で明確な戦略があれば、チーム全体の動きが揃い、売上アップや新規顧客獲得につなげやすくなります。本記事では、営業戦略の基本概念から実践的な立案方法まで、わかりやすく解説します。あわせて戦略立案に役立つフレームワークもご紹介します。読み終えたら、すぐに実践できる内容となっています。営業戦略と営業戦術の違い「営業戦略」とは、売上や市場シェアの拡大などの目標を達成するための方針です。変化する市場や競合の動きを捉え、顧客の期待に応えるための方向性を定めることが求められます。しばしば混同されがちな「営業戦略」と「営業戦術」ですが、戦略は「目標を達成するための方針や道筋」、戦術は「その戦略を実現するための具体的な行動計画や手段」を指し、この2つには明確な違いがあります。例えば次のように整理できます。目標:半期で売上を20%アップ戦略:既存顧客のアップセルを強化戦術:定期的なヒアリング訪問を実施/追加サービスの提案資料を作成/限定キャンペーンを企画・案内営業活動は、企業の成長や収益を左右する重要な要素です。その成果を最大化するためには、明確で実行力のある営業戦略を設計し、それを具体的な戦術に落とし込むことが欠かせません。営業戦略を立てる具体的な5つのステップ目的を明確に定義する 現状の課題を分析する顧客を理解する内部・外部環境を分析するKPIを設定し実行計画を策定するステップ1:目的を明確に定義する営業戦略を立てるうえで、最初のステップとなるのが目的の明確化です。目標が曖昧だと、結果的に行動も曖昧になりやすいため、誰が見ても同じ認識を持てるように、何を・いつまでに・どれくらい達成するのかを明確にすることが重要です。目標設定の指標としては、売上高や契約件数、利益率、顧客単価、さらには市場シェアなどがあります。「どの目標を」「どの時期と比較して」「いつまでに」「どれくらい達成するのか」を明確にすることが、実行力のある営業戦略の第一歩です。目標設定の例売上高目標:6ヶ月後に昨年同月比120%を達成売上件数目標:1年後に昨年同期間比150%を達成顧客単価目標:3ヶ月後に昨年四半期比15%アップ目標を設定する際は、「SMARTの原則」というフレームワークを活用するのが効果的です。SMARTの原則S(Specific):具体的であることM(Measurable):測定可能であることA(Achievable):達成可能であることR(Relevant):関連性があることT(Time-bound):期限を持つことステップ2:現状の課題を分析する社内・社外のデータを多角的に把握し、収集した情報をもとに、「売上目標未達の原因は何か?」「優先的に解決すべきボトルネックはどこか?」といった視点から検討し、自社が取るべき戦略の方向性や克服すべき主要な課題を明確にします。社内で押さえるべきデータ売上・受注状況(月別・四半期別売上(全体と商品別など))新規顧客数・リピート顧客数、顧客単価(平均)営業活動の成果、営業担当者別の受注件数・成約率、商談ステージ別件数(リード・提案・クロージング)顧客の声(解約・離脱理由、顧客満足度の傾向)、アンケート結果社外で押さえるべきデータ市場・競合の概況(主要競合の価格帯・サービス特徴)、市場規模や成長率(業界レポートなど)顧客動向(ターゲット層のニーズやトレンドの変化)ステップ3:顧客を理解する顧客理解を深め、どの顧客層をターゲットにするかを明確に定めることは、営業戦略を成功させるうえで欠かせません。ターゲットを明確にすることで、成果に直結するアプローチが可能になります。顧客理解を深めるために特に取り組みたいのが、「ペルソナの設定」と「カスタマージャーニーマップ」の作成です。ペルソナの設計ペルソナとはターゲット顧客の具体的な人物像を、実在する個人のように詳細に設定したものです。年齢・職業・価値観・行動パターンなどを明確にすることで、顧客が抱える課題やニーズを具体的に把握できます。ペルソナを活用することで、以下のメリットがあります。営業チーム内で顧客イメージを統一できる顧客に寄り添ったメッセージやコンテンツを作成しやすくなる製品開発やサービス改善のヒントがみつかる顧客の課題やニーズにマッチした提案が可能になり、成約率向上に繋がるカスタマージャーニーマップカスタマージャーニーマップとは顧客がサービスや製品と出会い、購入やリピートに至るまでの一連の行動や心理、感情の変化を整理したものです。顧客が購買行動を行う際の情報収集や意思決定の道筋を明確にすることで、どのタイミングでどのようなアプローチを行うべきかを具体的に検討できます。マップ作成の際は、顧客の行動を「購買前」「購買時」「購買後」などの時間軸で区切り、それぞれの段階での行動や感情、課題を予測しながら、購買動機づけや最適な施策を考えていきます。カスタマージャーニーマップを活用することで以下のメリットが得られます。 顧客の購買プロセスを可視化各段階での心の動きや行動を把握最適なアプローチタイミングを特定ペルソナとカスタマージャーニーマップを組み合わせることで、顧客の課題やニーズに沿った戦略設計が可能になります。ステップ4:内部・外部環境を分析する営業戦略を策定するうえで欠かせないのが、内部・外部環境の分析です。環境を正しく把握することで、自社が活かせるリソースや市場でのポジションが明確になり、戦略の精度を大きく向上させることができます。内部環境分析内部環境分析とは、自社が営業活動に投入できるリソースを具体的に把握することです。例えば、営業の人数やスキル、四半期ごとの予算規模、活用できるツールなど、ヒト・モノ・カネ・情報といった自社資源を整理・理解することが重要です。【主な内部環境のチェックポイント】営業人数・スキル予算規模(四半期/年間)利用可能なツールやシステム外部環境分析外部環境分析では、市場での自社の立ち位置や競合状況、市場の成長性やトレンドを把握します。この分析により、自社がリソースを集中すべき領域やターゲット市場を明確にすることが可能です。【主な外部環境のチェックポイント】競合の動向や強み・弱み市場規模や成長性、業界トレンド経済の状況や法規制などの影響SWOT分析で戦略の方向性を検討内部・外部環境を整理する際には、SWOT分析を活用すると効果的です。自社の内部リソース(強み (Strength) /弱み (Weakness) )「機会 (Opportunities)」「脅威 (Threats)」 と外部環境(機会 (Opportunities) /脅威 (Threats) )を組み合わせて検討することで、戦略の方向性をより具体的かつ実行可能な形で設計できます。ステップ5:KPIを設定し実行計画を策定する営業戦略で成果を判断するには、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設定が欠かせません。KPIは「何を達成したいか」と「そのためにどのような行動が必要か」を明確にする指標で、営業活動の成果を客観的に評価・改善するために用いられます。KPIを設定することで、営業活動の進捗を可視化でき、課題発見や改善につなげることができます。設定する際は、ステップ1で設定したKGI(最終目標)と連動させる必要があります。営業で設定できるKPIの例新規見込み顧客獲得数見込み顧客数訪問件数提案件数顧客単価・新規顧客売上・既存顧客売上営業開始から成約までの期間成約率などKPIを設定することで、営業活動の進捗を可視化し、課題の早期発見や改善につなげることができます。KPIツリーで目標達成を可視化KPIをより実践的に活用するには、KPIツリーの作成が有効です。KPIツリーとは、最終目標(KGI)を達成するために必要なKPIを樹形図のように分解・整理したもの。このツリーを使って「数字と行動」を結びつけることができます。例えば6ヶ月後に昨年同月比120%という目標の場合このプロセスを経ることで、ただ何となく営業施策を行うのではなく、目標達成への具体的な道筋を持った戦略的な実行が可能になります。実行後の振り返りと改善その後に重要なのは、実行した施策の結果をきちんと振り返り、改善を続けることです。市場環境や顧客の反応は常に変化するため、柔軟に見直しを行いながらPDCAサイクルを回すことが、目標達成への確実な道筋となります。営業戦略立案に使えるフレームワークフレームワークを活用すると、複雑な戦略立案を効率的かつ効果的に進められます。主なメリットは以下の3つです。議論の共通言語化とスピードの向上:全員が同じ視点で課題を共有できるため、認識のズレがなく、議論や意思決定のスピードが大幅に向上します。分析の抜け漏れの防止:重要要素を体系的にチェックできるため、抜け漏れなく現状を把握し、効率よく本質的な課題にたどり着けます。効率的に質の高い戦略立案:成功事例に基づく「フレームワーク(型)」を活用するため、ゼロから考える必要がなく経験や勘に頼らず短時間で質の高い戦略を構築できます。営業戦略立案に役立つフレームワークここでは代表的な4つのフレームをご紹介します。①3C分析顧客 (Customer)、競合 (Competitor)、自社 (Company)の3つの視点から、外部環境と内部環境を包括的に分析する手法です。目的:市場における成功要因(KFS)を見つけ、戦略の方向性や事業の定義を決定。②SWOT分析SWOT分析は、企業やプロジェクトの「強み (Strength)」「弱み (Weakness)」「機会 (Opportunities)」「脅威 (Threats)」を整理し、戦略立案や意思決定に活かすためのフレームワークです。目的:自社の強みを活かし、機会を捉えるための具体的な戦略立案や、事業リスクの特定に役立てる。③4P分析製品 (Product)、価格 (Price)、流通 (Place)、販促 (Promotion)の4要素を組み合わせ、販売戦略を検討する手法です。目的:企業側(売り手)の視点で、市場へ提供する具体的な戦術(マーケティングミックス)を設計④4C分析顧客価値 (Customer Value)、顧客コスト (Cost)、利便性 (Convenience)、コミュニケーション (Communication)の4要素から戦略を検討する手法です。目的:顧客側(買い手)の視点に立ち、顧客にとっての価値を最大化する販売戦略やサービス設計に活用よくある質問(FAQ)Q1.小規模な会社でも営業戦略は必要ですか? 会社の規模に関わらず、営業戦略は必要です。むしろ小規模な会社ほど、限られたリソースを効率的に活用するために、明確な方向性と優先順位が求められます。規模に応じて、まずはシンプルな戦略から始めるのがおすすめです。Q2.フレームワークは全て使う必要がありますか? いいえ、自社の状況や課題に応じて適切なフレームワークを選択してください。全てを 使うよりも、1〜2つのフレームワークを深く活用する方が効果的な場合もあります。Q3. KPIツリーを作るとき、どのレベルまで細かく分解すればいいですか?KPIツリーはあまり細かくしすぎると管理が複雑になるため、例えば「新規リード獲得数→商談件数→成約件数」など、「チーム単位で改善行動につなげられる指標」を目安に設定すると効果的です。Q4.PDCAサイクルを回す時間がない場合、どう効率的に振り返ればいいですか?毎週・毎月の定例ミーティングで、KPIツリーに沿った進捗だけを簡単に確認する方法がおすすめです。数字や行動の「差分」を可視化するだけでも改善ポイントが明確になります。まとめ営業戦略は、日々の忙しさに忙殺されがちなチームに、「何を」「どうやるか」を明確に示す羅針盤です。限りあるリソースの中で、最大の成果(昨年対比120%達成など)を引き出すためには、戦略的な行動へと舵を切ることが不可欠です。「頑張っているのに成果が出ない」状況は、戦略不足が原因かもしれません。マイナビProfessionalなら、戦略立案から実行まで一貫して支援 営業戦略の立案は理論を理解していても、実際に自社に適用するとなると多くの課題に直面します。「フレームワークは分かったが、自社にどう当てはめればよいか分からない」「戦略は立てたが、実行できる人材やリソースが足りない 」「KPI設定や効果測定の具体的な方法を知りたい」そんなお悩みをお持ちの企業様には、マイナビProfessionalがお手伝いいたします。 まずは無料相談から 「どんな営業人材がいるのか知りたい」「自社の課題に合うか相談したい」「営業戦略の立て方から相談したい」課題が明確でなくても大丈夫です。まずはお気軽にお問い合わせください。