この記事でわかること マーケティング組織の役割と業務内容組織形態別の特徴とメリット・デメリットフェーズ別の立ち上げ・運営方法AI時代に求められるマーケターのスキルよくある課題と具体的な解決策 はじめに「限られた人材や予算でマーケティング組織をどう運営すればいいか」「担当者のスキル不足や社内教育体制がなく育成が進まない」 「営業部門との連携がうまくいかず、せっかくの施策が成果に結びつかない」 こうした悩みを抱えるBtoB企業は少なくありません。マーケティング組織の課題は、リソース不足やノウハウ不足、部署間の連携不足に起因することが多く、放置するとリード獲得効率の低下や売上停滞につながります。特にこれから組織を立ち上げる企業や、既存組織を改善したい管理職の方にとって、戦略と体制を整えることは喫緊の課題です。本記事では、マーケティング組織の役割や業務、組織形態、フェーズ別の運営方法を整理するとともに、よくある質問と、AI活用のポイントをまとめました。マーケティング組織とは? 役割と業務内容を解説マーケティング組織の役割マーケティング組織は、企業の製品やサービスを市場で継続的に選ばれる存在にするための専門組織です。 具体的には、顧客のニーズを深く理解し、それに応じた価値を提供することで売上拡大に貢献します。成果向上を目指すためには、全社的にこのマーケティングに取り組む必要があります。BtoB企業の場合、特に重要なのは見込み顧客の獲得です。 インサイドセールスが不足している企業では、見込み客の育成や営業への引き渡しまでマーケティング部門が担うこともあります。マーケティング組織は「顧客と企業をつなぐ価値創造のハブ」ともいえるでしょう。また、近年ではITやSNSの発展により顧客が自ら情報を収集し、営業が接触する前に購買の意思決定が行われるケースが増加しています。つまり、意思決定よりも前に見込み客にアプローチできるようマーケティング専門の組織を別途立ち上げ、デジタルマーケティングに精通した人員の獲得や育成が急務となっています。マーケティング組織の主な業務マーケティング組織の業務は、大きく分けてマーケティング戦略設計・施策実行・マーケティング分析の3つです。 これらの業務を効率的に回すため、組織のフェーズや規模に応じて担当者の役割を最適化することが重要です。業務分類主な内容マーケティング戦略設計・市場分析・ターゲット設定・訴求ポイント決定・ブランド構築など、誰に、何を、どのように売るかを定める施策実行コンテンツマーケティングや広告運用、セミナー・展示会運営などで見込み顧客を集める。その後、メールマーケティングや営業連携を通じ、見込み顧客の関心を育成する。マーケティング分析施策効果をデータで可視化し、戦略改善に活かすマーケティング組織の主な職種マーケティング組織の典型的な職種と役割は以下の通りです。 立ち上げフェーズではマーケティングマネージャーとマーケターの2名体制で十分な場合もあります。施策実行や記事執筆、デザイン作業をマーケティングマネージャーやマーケターが兼務するケースもあります。 リソースや知識が不足している場合、専門性の高い業務においては外部パートナーに委託しながら内製化を進めるのも有効な選択肢といえるでしょう。職種業務内容 マーケティングマネージャー組織全体の戦略策定KPI管理進捗管理マーケター戦略に基づき、施策の立案・実行を担当ライターブログ記事・ホワイトペーパーなどのコンテンツ制作デザイナーWEB・資料・広告ビジュアルの制作コーダーWEBサイトやLPのコーディングデータアナリストデータ収集・分析に基づく施策改善マーケティング組織の代表的な組織図企業の規模や事業内容、経営戦略によって、マーケティング組織の形は大きく変わります。 ここでは代表的な組織パターンを取り上げ、それぞれの特徴やメリット・デメリットを整理してご紹介します。自社に最適な体制を考える際の参考にしてください。設置パターン内容メリットデメリット①各事業部内に設置事業部ごとに専任のマーケティングチームを配置し、事業戦略に沿った施策を展開するスタイル。商材ごとに事業部が分かれている企業で多く採用される。・事業部内での情報共有がスムーズで、市場や顧客の変化に迅速に対応できる・各事業部の商材やターゲットに最適化されたマーケティング戦略を実行できる・営業部門との連携が強化され、リードの獲得から商談化までのプロセスが効率化される・全社的なマーケティング戦略の統一が難しくなることがある・事業部ごとに人材やリソースが分散し、専門性の高いメンバーの確保が課題になる・事業部を横断したノウハウや成功事例などのナレッジ共有が進みにくい②独立した事業部として設置マーケティングを独立した事業部として設置し、全社レベルでの戦略策定・実行を統括する。経営陣直轄として設置されるケースもあり、意思決定のスピードや権限面でのメリットが大きい。・経営陣から直接指示やサポートを受けやすく、意思決定が迅速に行える・全社的なブランディング戦略を統一しやすく、メッセージに一貫性を持たせられる・マーケティング人材のリソースが分散せず、ノウハウや知見を組織内に蓄積しやすい・事業部ごとの個別ニーズに対応しづらく、きめ細かい施策が遅れがちになる・営業部門との連携が希薄になりやすく、リードの活用が十分でない場合がある・顧客の声や市場の動向を即座に把握するのが難しく、戦略とマーケットのギャップが生じることがある③プロジェクト単位で設置新規事業やキャンペーン施策など、特定の目的に応じてマーケティングチームを編成する。期間限定で集中的に成果を出したい場合に適している。・プロジェクトの目的に特化した柔軟なチームを構築できる・必要なスキルを持つ専門人材を適宜アサインできるため、限られたリソースを効率的に活用できる・プロジェクトごとに指揮命令系統が変わるため、チームとしての安定感に欠ける・短期的に結成されるため、ノウハウや知見が組織内に蓄積されにくいマーケティング組織の立ち上げと運営のステップマーケティング組織の成長フェーズは大きく2つに分かれており、それぞれのフェーズにおいてやるべきことは意外とシンプルです。ポイントは以下の3つに集約されます。 「誰に、どんな価値を届けるか」を明確にする「その価値をどう届けるか」を戦略として選ぶ「施策の費用対効果」を検証し、改善するこれを組織の成長フェーズに当てはめると、取り組むべき優先事項がより明確になります。組織フェーズ目的具体的な取り組み立ち上げフェーズ(1年目~)ゼロから組織を立ち上げ、最小限の人数で基盤を整えるまずは「誰にどんな価値を届けるか」を定め、その価値を届ける手段を選択することに集中する。 組織やリソースが限られているため、戦略の精度と実行計画の明確化が重要。 成長フェーズ(3年目~)施策拡大と効果検証を繰り返し、リード獲得を拡大する立ち上げで構築した基盤をもとに、施策の費用対効果を検証し、PDCAを回しながら改善を繰り返す。ここではデータに基づいた意思決定と施策の最適化が求められる。立ち上げフェーズ(1〜3名)マーケティング組織を立ち上げる初期段階では、予算や人員などのリソースが限られていることがほとんどです。そのため、最小限のチームで効率良く成果を出せる体制を整えることが求められます。 まず手をつけるべきはWEBサイトの整備です。WEBサイトは24時間稼働する営業ツールのような存在であり、ここを整備することで安定的にリードを獲得できる土台を築くことができます。 基盤がしっかりしていれば、その後の施策も効果的に回すことが可能になります。<チーム構成例>役職主な業務内容マーケティング責任者(1名)・全体戦略設計・KPI管理・営業連携マーケター(1〜2名)・コンテンツ制作・広告運用などの実務担当<外部委託可能な業務>SEO記事制作広告運用ホワイトペーパー作成初期戦略設計立ち上げフェーズの取り組み1:マーケティング戦略の立案限られたリソースで最も効率的に成果を出せる方向性を定めるため、次の2つに着手します。 ターゲットの特定既存顧客から「売上に貢献している優良層」を分析、もしくは今後獲得を狙いたい市場・顧客層を明確化し、「誰に価値を届けるのか」を定義します。商材の強みを特定顧客が評価しているポイントや自社の強みを抽出(例:サポート品質・価格優位性・専門性など)し、競合比較から差別化要素を整理します。それによって「どんな価値を届けるのか」「自社製品・サービスのアピールポイント」を明確にします。ターゲット設定や強みの特定をさらに体系的に進めたい方は、BtoBマーケティング戦略の立て方もあわせてご覧ください。立ち上げフェーズの取り組み2:マーケティング施策の検討・実施ターゲットに対して、効果的なチャネル・コンテンツでアプローチするための施策を検討し、実施します。集客施策とコンテンツ施策に分けて検討するのがよいでしょう。<集客施策(リード獲得経路の選定)>種類 概要施策例プル型施策顧客が自ら情報を探し、能動的に企業や製品に接触してくる仕組みを作る施策。・リスティング広告・SEO対策・オウンドメディア運営 プッシュ型施策企業側から顧客に対して能動的に情報を届け、アプローチする施策。・SNS広告 ・インサイドセールス・メールマーケティング<コンテンツ施策(見込み顧客の育成)>フェーズ内容コンテンツ例認知・興味喚起自社サービスに興味を持ってもらう「入口コンテンツ」・課題解決記事(「○○を効率化する3つの方法」)・業界トレンド解説・比較ガイド(「ツール選定の5つのポイント」)・導入メリット比較・検討サイト訪問・資料請求後に社内検討を後押しする「検討支援コンテンツ」 ・導入事例(業種・課題別に複数パターン)・機能比較表・競合比較資料・FAQ・よくある質問集・数値シミュレーション資料意思決定・導入どこまでをWeb上に公開し、どこからを商談で深堀りするかを明確に設計・公開情報:基本機能、料金体系の目安、導入事例の概要・商談で提供:詳細な料金見積もり、カスタマイズ提案、競合との詳細比較<立ち上げフェーズにおすすめの施策5選>①サービスサイトの改修CV導線とメッセージ統一を最優先②適切なCTA設置資料DL・問い合わせ・無料相談など、段階的なCVを設計③導入事例の作成信頼構築の重要コンテンツ④リストの整理既存顧客・見込み顧客をCRMで一元管理⑤広告出稿初期テストで反応を見てスモールスタート成長フェーズ(5〜10名)施策の種類が増えるため、立ち上げフェーズよりも専門性を高め、各分野での成果の最大化を目指します。マーケティング責任者を中心に、集客・育成・ブランディング・分析の4領域をカバーする構成が理想です。<チーム構成例>役職業務内容マーケティング責任者(1名)・組織統括・戦略設計・KPI管理・他部署との連携オウンドメディア担当(1〜2名)・メディア運営 ・記事やホワイトペーパー制作広告運用担当(1〜2名)・WEB広告運用セミナー担当(1〜2名)・展示会・セミナー運営ナーチャリング担当(1〜2名)・MA運用 ・インサイドセールス連携デザイナー(1名)・クリエイティブデザイン成長フェーズの取り組み1:マーケティング施策の幅を広げる立ち上げフェーズに確立した基盤(WEBサイト・CTA・導入事例など)をもとに、各専門担当者を配置して「集客・育成・転換」それぞれで施策を拡大・最大化していきます。 各施策に専任担当を設けることで、分析〜改善までの責任を持たせて成果を継続的に伸ばしていきます。フェーズ目的追加施策例集客リーチ拡大・SNS広告・記事広告・ウェビナー告知・展示会出展育成(ナーチャリング)リードの温度上昇・ステップメール・スコアリング運用・MA自動化転換(商談・契約)案件化・受注率向上・比較資料・導入事例動画・リターゲティング広告成長フェーズの取り組み2:効果測定と改善(PDCA)成長フェーズでは、「過去に成果が出た施策」だけでは限界が訪れます。市場環境や競合状況、ターゲットのニーズは常に変化していきますので、施策の効果測定を定期的に行い、データ分析を基盤にした改善サイクル(PDCA)を回すことが重要です。「仮説と検証のスピード感」を重視することが成長のポイントといえるでしょう。PDCAを効果的に回すためには、適切なKPI設計が欠かせません。具体的な指標の選び方は、BtoBマーケティングKPI設計ガイドで解説しています。AI時代に求められるマーケターとはマーケティングを取り巻く環境もテクノロジーの進化に合わせて変化しています。 特にAIの発展は、マーケターに求められるスキルや思考の高度化を後押ししているといえるでしょう。中でもコンテンツ制作(WEBメディアの記事制作や広告コピーの作成)やデータ分析の分野では、AIの活用が一般化しつつあります。AIの導入によって一人ひとりの生産性が飛躍的に向上し、マーケターは「人にしかできない業務」に時間を割けるようになり、戦略的・創造的な業務に集中できるようになりました。 一方で差別化は難しくなり、マーケターには創造的思考と独自の価値創出力が必要になりました。施策実行だけではなく「顧客に新たな価値体験を提供できる人材」が求められるようになっているのです。AIを味方につけながら、人にしか生み出せない価値を創り出す力を持つマーケティング組織こそが、次の時代をリードしていくといえるでしょう。これから求められるスキル1:「価値あるコンテンツ」を生み出す力AIによる自動生成コンテンツの増加の中で、これからのマーケターに求められるのは、独自の視点と付加価値を生み出す力です。市場理解を深め、競合との差別化を図る専門的な知識、AIが生成したコンテンツを精査し、ブランドに合わせて最適化するスキル、顧客の課題を解決へ導く物語を設計できるストーリーテリングスキルが求められます。これから求められるスキル2:データを読み解き、戦略に落とし込む力 AIによって処理した膨大なデータをどう読み解き、どう行動に変えるかは人間の判断に委ねられます。AI分析に依存しすぎない意思決定も重要です。データの背後にあるカスタマーインサイトを見抜き、確からしい仮説を立てる力、顧客の感情や動機を踏まえた施策を設計する設計力、自らの立てた仮説を問い直す検証力も必要です。これから求められるスキル3:「人間らしいマーケティング」の実践力AIがどれだけ進化しても、顧客の感情や共感に寄り添うマーケティングは人間にしかできません。だからこそ、データだけでなく「人の感情」への理解を重視する視点が欠かせません。顧客理解の深化、顧客の感情にヒットする施策設計、AIには作れない「世界観」を築き、ファンを生むブランドデザイン力が求められます。マーケティング業務へのAI導入を具体的に進めたい方は、生成AI導入で業務効率化!7ステップで企画から活用までをご覧ください。よくある質問(FAQ)Q1.マーケティング組織の立ち上げに最低限必要な人数は?最少1名からスタート可能ですが、理想は2〜3名体制です。マーケティング責任者1名に加え、戦略を実行できるマーケター1〜2名を配置することで、企画から施策までを一気通貫で進められます。立ち上げ初期は責任者が戦略設計・施策実行を兼務するケースも多く、SEO記事制作や広告運用など専門性が高い業務は外部パートナーを活用することで、少人数でも高い成果を出すことが可能です。Q2. マーケティング組織の立ち上げにかかる期間は?最短3ヶ月〜半年程度で基盤構築が可能です。最初の1〜2ヶ月でマーケティング戦略を策定し、「ターゲット」と「商材の強み」を明確にします。その後、WEBサイトの整備やリード獲得施策を段階的に開始します。ただし、成果が安定して見えるようになるまでには1年程度を要する場合が多いため、中長期的な視点で取り組むことが重要です。Q3. 営業部門との連携がうまくいかない場合、どうすればいい?まずは共通KPIの設定と定期的な情報共有を行いましょう。週次・月次のミーティングでリードの質や商談化率をデータで共有し、営業が求める「理想的なリード像」を明確にします。そのうえで、マーケティング施策に反映させることで両部門の目線が揃いやすくなります。また、営業からのフィードバックを受け取るための顧客情報のフィードバックシートの共有やCRM連携も効果的です。インサイドセールス機能の立ち上げを検討している場合は、インサイドセールス立ち上げの手順|失敗しないための5ステップが参考になります。Q4. 内製化と外注、どう使い分けるべき? 戦略設計やKPI管理など、事業の核心部分は内製化し、専門性が高く工数のかかる業務(記事制作、デザイン、広告運用など)は外注するのが基本です。 立ち上げ初期は外部パートナーに頼りながら、徐々にノウハウを社内に蓄積し、内製化を進めていくのが理想的でしょう。外部の知見を活用しつつ、自社に最適化していくのがポイントです。外部パートナーを活用しながら内製化を進める具体的な方法は、戦略から推進していくための新たな人材活用法をご参照ください。まとめマーケティング組織の成功は、「戦略」「体制」「実行」の3つがかみ合って初めて実現します。限られたリソースの中でも、自社の強みを的確に見極め、優先順位をつけて取り組むことで、着実に成果を積み上げていくことが可能です。特に、施策を実行するだけでなく、スピーディーに検証・改善を繰り返すサイクルを回せるかどうかが、成長の分岐点となります。本記事で紹介したポイントを振り返り、自社の状況に合わせて最適な体制づくりを進めていきましょう。立ち上げフェーズ:戦略設計とWEBサイトの基盤整備を最優先に行う成長フェーズ:施策の幅を広げ、PDCAを高速で回して成果を最大化営業連携:共通KPIを設定し、リード獲得から商談化までの一貫体制を構築外部パートナー活用:専門性を補いながら、段階的に内製化を進めるAI時代への対応:「人にしか生み出せない価値」を軸に、創造的なマーケティングを展開マーケティング組織の立ち上げや運営は決して容易ではありませんが、正しい方向性と実行体制さえ整えば、着実に成果へとつながります。 一歩ずつ改善を積み重ね、自社のマーケティングを「仕組みで成長する組織」へと育てていきましょう。マーケティング組織の課題を、プロ人材と一緒に解決しませんか? マーケティング組織の立ち上げや運営において、「専門人材が採用できない」「ノウハウが社内に蓄積されない」「施策を実行できる人材がいない」といった課題を抱える企業は少なくありません。マイナビProfessionalは、こうしたマーケティング領域の課題を、プロ人材の知見とマイナビの伴走支援で解決するサービスです。デジタルマーケティング、コンテンツ戦略、リード獲得施策など、貴社の課題に応じた専門人材が、戦略立案から実務実行まで一気通貫で支援します。6万人超のプロ人材データベースから最適な人材をご提案し、最短3週間で協働を開始できるため、採用活動に時間をかけずにマーケティング体制を強化できます。さらに、プロと共に施策を進める中で、成功パターンやノウハウが社内に蓄積され、支援終了後も自走できる組織へと成長を促します。「まずは1名から試したい」「課題が整理できていない」という段階でも問題ありません。マーケティング組織の立ち上げ・強化をご検討の方は、ぜひサービス資料をご覧ください。