ウェルビーイング経営とは何か?どう始めればいい?ウェルビーイング経営とは、従業員が心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態で働ける環境を整える経営手法です。健康経営が身体・精神面の健康管理に重点を置くのに対し、ウェルビーイング経営は働きがいや人間関係、人生全体の幸福度まで含めた包括的なアプローチを取ります。始め方としては、まず従業員満足度調査で現状を把握し、労働時間の適正化や1on1ミーティングの導入など、コストをかけずにできる施策から段階的に進めるのが効果的です。本記事でわかることウェルビーイング経営の定義と健康経営との違い導入が求められる社会的背景離職率低下・生産性向上など5つのメリット実践時の注意点と6つの推進ステップウェルビーイング経営とは何かウェルビーイング経営を理解するためには、まず「ウェルビーイング」という言葉の意味を正しく捉えることが重要です。ここでは、その定義から順を追って解説します。ウェルビーイングの定義ウェルビーイング(Well-being)とは、「良い(Well)」と「存在・状態(Being)」を組み合わせた言葉であり、身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態を意味します。この概念は、単なる健康や快適さにとどまらず、人生全体を通じた持続的かつ包括的な充足感を重視するものです。たとえば、困難な状況にあっても、自らの人生に意味や目的を見出し、前向きに歩むことができる人は、ウェルビーイングが高いとされます。世界保健機関(WHO)は健康を、「病気でないことや虚弱でないことにとどまらず、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態である」と定義しており、これはウェルビーイングの考え方と深く通じています。このように、ウェルビーイングとは、健康の有無を超えて、人がよりよく生きることを追求するための包括的な視点であり、現代社会においてますます重要性を増しています。主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイングウェルビーイングには、大きく分けて「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」の2つの側面があります。①主観的ウェルビーイング個人の認識や感覚によって測定されるもので、幸福感やポジティブな感情、人生に対する満足度などが指標となります。一人ひとりの価値観に左右されるため、個別性が高いのが特徴です。【例】「仕事にやりがいを感じる」「職場の人間関係が良好で安心できる」「自分の成長を実感できる」 など②客観的ウェルビーイング数値で把握できる指標であり、GDP(国内総生産)や失業率、平均寿命などの統計データが用いられます。国や地域間の比較や政策評価に活用されることが多いのが特徴です。【例】平均年収や所得格差労働時間や有給取得率健康診断の受診率や生活習慣病の罹患率従業員一人ひとりの主観的な幸福感を高めることは、組織全体の生産性や定着率の向上につながり、企業の持続的な成長を支える重要な要素です。主観的ウェルビーイングは、もはや福利厚生の一環ではなく、戦略的に取り組むべき経営課題と位置づけられています。主観的ウェルビーイングは、もはや福利厚生の一環ではなく、戦略的に取り組むべき経営課題とみなされています。ウェルビーイング経営の定義ウェルビーイング経営とは、従業員が単に病気でない状態にとどまらず、仕事への愛着やエンゲージメントを高めながら、心身ともに健やかで社会的にも満たされた状態で働ける環境を整えることを目指す経営手法です。この考え方は、個人のライフスタイルに委ねるものではなく、企業が組織的に取り組むべき経営課題とされています。ウェルビーイングと経営指標との強い相関が報告されており、世界各国で導入が進む中、2025年3月にオックスフォード大学ウェルビーイング研究センターが発表した「世界幸福度報告書(World Happiness Report 2025)」では、日本は147カ国中55位、G7では最下位という結果でした。[1]こうした状況を受け、日本国内でもウェルビーイング経営への関心が高まり、導入が加速しています。従業員のウェルビーイングを支援することは、意欲や生産性の向上に直結するだけでなく、企業の持続的な成長にもつながります。柔軟な勤務体制、健康管理の充実、良好な人間関係の構築などを通じて、働く人々の幸福を支えることが、結果として企業全体の価値創造を促進します。さらに、ウェルビーイング経営は自社の利益追求にとどまらず、従業員、取引先、地域社会など、企業に関わるすべてのステークホルダーの幸福の実現を重視する経営姿勢でもあります。企業は社会的責任を果たしながら、共感と信頼を基盤とした持続可能な関係性の構築が求められています。ウェルビーイング経営と健康経営との違いウェルビーイング経営と混同されやすい概念に「健康経営」があります。両者は目的やアプローチにおいて異なる視点を持っており、以下のように整理できます。項目ウェルビーイング経営健康経営視点従業員視点企業視点推進方向ボトムアップ型(現場起点)トップダウン型(経営主導)目指す状態身体的・精神的・社会的に満たされた状態身体的・精神的な健康範囲幸福度全般健康管理・増進健康経営は、企業が主体となって従業員の心身の健康維持・向上を図る取り組みです。それに対し、ウェルビーイング経営は、従業員の視点に立ち、社会的な充足も含めた「幸福度全体の向上」を目指す、より広範で包括的なアプローチです。ウェルビーイング経営が求められる背景それでは、なぜ今ウェルビーイング経営が求められているのか、その背景をひも解いてみましょう。背景1:労働人口減少と人材不足少子高齢化により、日本の労働人口は減少を続けており、企業にとって人材確保は喫緊の課題となっています。帝国データバンクの調査(2024年10月)では、正社員が不足している企業は51.7%にのぼり、高止まりが続いています。[2]さらに、日本商工会議所の調査では、6割超(63.0%) の中小企業が人手不足を実感し、そのうち約65%が事業運営に「非常に深刻」または「深刻」な影響があると回答しています。[3]こうした状況下では、限られた人材で成果を上げるために、求職者や従業員にとって魅力的で、生産性の高まる職場環境の整備が不可欠です。その解決策として、ウェルビーイング経営が注目されるようになりました従業員が心身ともに健やかで、社会的にも満たされた状態で働ける環境を整えることで、エンゲージメントや定着率が高まり、企業の魅力と競争力の向上につながることが期待されています。背景2:働き方改革と価値観の変化働き方改革の進展により、かつての長時間労働や休日返上といった働き方は、健康リスクや生産性低下の要因として社会的に問題視されるようになりました。2019年4月施行の働き方改革関連法(労働基準法改正)により、時間外労働の上限が法律で規定されました。原則として月45時間・年360時間が上限となり、臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満かつ2〜6か月平均80時間以内とする必要があります。違反した場合には罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。 ※大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用。[4]さらに、ライフスタイルの多様化に伴い、労働者の仕事観も大きく変化しています。博報堂生活総合研究所が1992年から隔年で実施している長期時系列調査「生活定点」によると、「休みがたっぷりよりも、給料が高い方がいい」と「高い給料よりも、休みがたっぷりな方がいい」という設問において、調査開始以来"給料高い派"が過半数を維持し優位でしたが、2024年についに"休みたっぷり派"が逆転し、ほぼ半々となりました。本調査から、働くことよりもプライベートを重視する人が増えてきていることがうかがえます。[5]このような働き方に対する社会的背景を踏まえ、企業には従業員のワークライフバランスを尊重し、健康的で充実した働き方を支援する環境整備が求められています。その対応策として、従業員が心身ともに健やかで社会的にも満たされた状態で働ける環境を整える「ウェルビーイング経営」が、持続可能な組織づくりに向けた有効な手段として位置づけられています。背景3:SDGsへの意識の高まり2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までに達成すべき17の目標が掲げられています。その中でも、目標3「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」は、身体的な健康だけでなく、心の健康や社会的な安心も含めた包括的な福祉の実現を目指しています。また、目標8「働きがいも経済成長も(Decent Work and Economic Growth)」では、経済成長とともに、すべての人が人間らしく働き、生活できる社会の構築が求められています。ウェルビーイング経営は、こうしたSDGsの理念と深く結びついており、従業員の心身の健康や働きがいを支える取り組みを通じて、目標3および目標8の達成に直接貢献するものです。さらに、(株)ラフールが実施した調査(2022年)によれば、Z世代の73.4%が「勤務先がウェルビーイング経営を取り入れていると、貢献意識や働きがいにつながる」と回答しています。また、Z世代はSDGsに対する意識が高く、SDGsに取り組む企業を評価する傾向にあることも指摘されています。[6]このように、次世代を担う人材の価値観にも合致するウェルビーイング経営は、企業のサステナビリティ戦略や人材確保の観点からも、重要な経営課題として位置づけられつつあります。SDGs経営の具体的な取り組み方については、SDGs経営とは?企業におけるメリットや取り組みについて解説で詳しく解説しています。背景4:GDPでは測れない豊かさこれまで国の豊かさはGDP(国内総生産)によって測られてきましたが、GDPは経済規模を示すにすぎず、国民の生活満足度や幸福度を反映しているとは限りません。実際、経済成長の裏で環境破壊や過労死、所得格差の拡大といった問題が生じても、GDPは増加し続けることがあります。こうした限界を補う指標として、国民の心身の健康や社会的な充実度を含めて測る「GDW(Gross Domestic Well-being:国内総充実度)」が注目されています。たとえばイギリスでは、GDWeが2013年の6.55から2015年に6.99まで上昇した後、2018年以降は低下傾向に入り、2022年時点では6.79にまで低下していました。一方、GDPは2013年の1.9兆ポンドから2019年には2.2兆ポンドまで堅調に成長しており、物質的な豊かさと主観的な幸福度の間に乖離が生じていることがわかります[7]。日本ではまだGDWの正式な算出は行われていませんが、ウェルビーイングに関する調査や政策的関心は高まっており、今後の導入が期待されています。こうしたグローバルレベルでの価値観の変化を背景に、企業においても従業員のウェルビーイングを重視する経営が広がりつつあります。ウェルビーイング経営のメリット次に、ウェルビーイング経営が企業にもたらす具体的な効果を整理します。メリット1:離職率の低下退職理由として多く挙げられるのは、報酬や福利厚生といった金銭面よりも、人間関係や労働時間、職場の雰囲気など、環境面に関する不満です。実際、厚生労働省「令和4年雇用動向調査」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として、「定年・契約期間の満了」に次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係が好ましくなかった」が多く挙げられており、職場環境への不満が離職理由の一因となっていることがわかります。[8]人材の定着は、社内に蓄積された知識・ノウハウの維持にもつながり、結果として組織の競争力強化に貢献します。評価制度の改善で定着率を高めたい方は、人事評価制度の設計方法と事例もあわせてご覧ください。メリット2:採用力の強化近年、就職・転職活動においては、企業の口コミサイト(例:OpenWork、転職会議など)で情報収集することが一般化しています。これらの口コミ評価は、給与や福利厚生といった金銭的要素よりも、職場の雰囲気や人間関係、働きがいといった主観的なウェルビーイングに大きく左右される傾向があります。実際、(株)ラフールが2022年に実施した調査(2024年SRM学会関東部会にて井上昌美氏が引用)によれば、従業員1,000名以上の企業に勤めるZ世代の71.6%が「ウェルビーイング経営が転職先選びの条件になる」と回答しており、企業の取り組みが採用活動に直結する可能性が示されています。[10]ウェルビーイング経営に取り組み、幸福度の高い従業員が多い企業は、口コミサイトで高評価を得やすく、結果として優秀な人材の獲得につながります。さらに、従業員満足度の高さは、企業ブランドイメージの向上にも寄与し、採用力の持続的な強化につながると考えられます。メリット3:生産性と創造性の向上アメリカ・イリノイ大学心理学部名誉教授のエド・ディーナー博士らの研究によれば、主観的幸福度(幸福感)の高い人はそうでない人に比べて、創造性は3倍、生産性は31%、売り上げは37%高い傾向にあることが明らかになっています。[11]このようなデータから、従業員の心身の健康や働きがいを支えるウェルビーイング経営を推進することは、結果として企業全体の生産性向上や創造的な成果の創出につながると考えられます。加えて、欠勤率の低下やチームの協働性向上といった副次的な効果も報告されており、これらは持続的な組織力の強化にも貢献します。そのため、ウェルビーイング経営は、単なる福利厚生の充実にとどまるものではなく、企業の競争力を高める戦略的な取り組みとして捉えるべき重要な経営施策です。メリット4:企業価値の向上従業員一人ひとりがポテンシャルを最大限に発揮できる環境が整えば、顧客との関係性の向上やイノベーションの創出が促進されます。こうした環境づくりに寄与するウェルビーイング経営は、企業の業績にも好影響をもたらすことがデータからも明らかになっています。アステリア社の調査によると、ウェルビーイングに積極的な企業は、過去3年間で営業利益が平均約13%、売上高が約11%上昇しており、取り組んでいない企業と比較すると約2倍の差があることが報告されています。この結果は、ウェルビーイングへの取り組みが企業の業績成長と強い相関関係を持つことを示しています[12]。さらに、ウェルビーイング経営への取り組みは、投資家や取引先からの評価向上にもつながり、企業価値全体の向上に寄与する重要な要素となっています。メリット5:経営コストの削減従業員が心身ともに健康な状態を維持できれば、医療費の削減につながります。また、欠勤や休職の減少により、人件費の効率化も実現可能です。さらに、従業員の集中力や注意力が保たれることで、労災発生率の低下と関連コストの抑制にもつながると考えられます。米国のウェルネスプラットフォーム企業 Wellhub が発表した「2024年版 ウェルビーイング投資収益率レポート」によると、以下のような成果が報告されています。[13]医療福利費の削減:人事責任者の91%が、ウェルビーイングプログラムの導入により医療費が減少したと回答(前年比78% → 91%)病気休暇・欠勤の減少:同じく89%が、従業員の病気休暇が減少したと認識(前年比85% → 89%)このように、ウェルビーイングへの投資は、従業員の健康や働きがいを支えるだけでなく、医療費や人件費の削減といった明確なリターンをもたらす、費用対効果に優れた経営施策といえます。ウェルビーイング経営に取り組む際の注意点ウェルビーイング経営を導入・推進する際には、短期的な課題と長期的な成果の両面を見据えた視点が求められます。注意点1:短期的な利益への影響を理解する従業員の業務量や勤務時間の見直しにより、労働時間が減少すれば、短期的には売上や利益に影響が生じる可能性があります。また、職場環境の整備に伴う設備投資や制度設計により、一時的に利益率が低下するケースも想定されます。加えて、新たな制度導入に伴う業務の混乱や、施策の効果が現れるまでのタイムラグも考慮する必要があります。こうした初期的な負荷や不確実性を踏まえ、施策の目的と期待効果を社内で共有しながら、計画的かつ段階的に導入を進めることが重要です。注意点2:長期的視点の重要性一方で、ウェルビーイング経営の継続的な推進により、従業員の幸福度が高まれば、生産性や創造性の向上につながり、結果として中長期的には業績や企業価値の向上が期待できます。MUFG資産形成研究所の「ウェルビーイングと企業業績の現状分析および予測可能性の検討」では、以下が示唆されています。[14]ウェルビーイングは将来の売上高成長率と正の相関があること企業価値の向上がウェルビーイングの向上にもつながる好循環の可能性があることこのように、ウェルビーイング経営は一時的な負荷や制度導入時の混乱といった課題も伴いますが、従業員の幸福度向上を通じて、企業の持続的な成長と価値創出を実現する、長期的視点に立った重要な経営施策といえます。ウェルビーイング経営の推進方法次に、ウェルビーイング経営を効果的に推進するための6つの方法について、理論的な枠組みと具体的な施策例を交えて紹介します。推進方法1:PERMAモデルの活用ウェルビーイング経営を効果的に進めるには、従業員の幸福を構成する要素を体系的に捉える視点が欠かせません。その枠組みとして有効なのが、ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン博士が提唱した「PERMAモデル」です。このモデルは、持続的な幸福を支える5つの心理的要素に基づき、ウェルビーイング施策の設計や評価に幅広く活用されています。1. Positive Emotion(ポジティブな感情)前向きな感情を日常的に感じられる状態を指します。喜びや感謝、安心感、満足感などが含まれます。【例】上司からの感謝の言葉に嬉しさを感じるチームで成果を祝う場がある自然光や植物のある職場で穏やかな気持ちになる 2. Engagement(関与感・没頭)自分の強みを活かし、仕事や活動に深く没頭できる状態です。時間を忘れるほど集中できる経験が該当します。【例】得意分野の業務にやりがいを感じる時間を忘れるほど業務に没頭するスキルアップに集中できる研修環境がある3. Relationship(良好な人間関係)信頼や共感に基づく人とのつながりを意味します。職場での人間関係の質は、幸福感に大きく影響します。【例】同僚と気軽に相談できる関係性雑談やランチで安心できる居場所があるチームで助け合う文化がある4. Meaning(人生の意味・意義)自分の仕事や行動が、社会や他者に貢献していると感じられる状態です。目的意識を持って働くことが重要です。【例】自社サービスが地域に役立っていると実感CSR活動やボランティアへの参加誰かの役に立つ業務に携わっている5. Accomplishment(達成感)目標を達成することで得られる満足感や自信を指します。努力が認められ、成長を実感できることが含まれます。KPI達成で評価を受ける新しい業務に挑戦し成果を出す資格取得などで成長を実感するこれら5つの要素を満たすことで、従業員の持続的な幸福が実現し、組織全体の活性化につながります。PERMAモデルのような理論的枠組みを活用しながら、労働環境の整備、メンタルヘルスケア、コミュニケーションの促進、満足度調査、ツールの導入などを総合的に推進することで、従業員一人ひとりが安心して力を発揮できる職場環境を構築することができます。推進方法2:労働環境の改善長時間労働や休日出勤が常態化している職場では、まず労働環境の是正が求められます。 従業員が心身ともに安心して働ける環境を整えることは、ウェルビーイング経営を推進するうえでの土台となります。【主な施策例】労働時間の適正化と残業時間の削減有給休暇の取得促進リモートワークやフレックスタイム制度の導入時短勤務や副業・兼業など、多様な働き方の容認職場の物理的環境(照明・空調・休憩スペースなど)の整備 など従業員がいきいきと働ける職場を実現するには、まず現状の労働環境を丁寧に見直し、充足感を得られる環境づくりを段階的に進めていくことが重要です。推進方法3:メンタルヘルスケアの充実従業員の精神的な健康を維持するためには、メンタルヘルスケアの体制を整えることが重要です。心の不調を未然に防ぎ、早期に気づいて対応できる環境づくりが、安心して働ける職場につながります。【主な施策例】ストレスマネジメント研修の実施ストレスチェック制度の導入気軽に相談できる窓口の設置産業医との定期的な面談機会の提供メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応 など予防と早期発見の両面から継続的に取り組むことで、従業員のウェルビーイングを支える基盤が整います。推進方法4:コミュニケーションの活性化職場内のコミュニケーションが不足すると、人間関係の希薄化やストレスの増加につながります。従業員同士が安心して意見を交わせる環境づくりは、ウェルビーイングの向上に欠かせません。【主な施策例】1on1ミーティングの定期的な実施メンター制度の導入感謝を伝え合うサンクスメッセージの仕組み社内イベントや懇親会の開催チャットツールや社内SNSの活用談話室やリフレッシュスペースの設置上司と部下、従業員同士のコミュニケーションを促進することで、風通しの良い職場風土を育むことができます。推進方法5:従業員満足度調査の実施ウェルビーイング経営を効果的に進めるためには、現状を正確に把握することが重要です。従業員満足度調査(エンゲージメントサーベイ)を実施することで、職場環境や働きがいに関する多面的な情報を可視化できます。エンゲージメントサーベイとは、従業員が職場に対してどの程度意欲的に関わっているかを測定する調査であり、組織への信頼感や貢献意欲、職場への満足度などを把握することができます。【調査項目例】社内制度に対する満足度人間関係や職場の風土待遇や福利厚生に対する評価キャリアパスに関する意見働き方に対する不満や要望 など調査結果を分析することで、従業員のウェルビーイング向上に向けた具体的な施策を特定できます。また、従業員エクスペリエンス(EX)の視点から、採用から退職までの全体験を見直し、継続的に改善していくことも重要です。エンゲージメント向上のための具体的な施策については、エンゲージメント経営の実践方法|導入手順と7つの施策を解説で体系的に解説しています。推進方法6:システム・ツールの導入ウェルビーイング経営の施策を効率的に進めるためには、適切なシステムやツールの活用が効果的です。従業員の状態を可視化し、コミュニケーションや働き方の質を高めるための仕組みとして、テクノロジーの力を積極的に取り入れることが求められます。【ツール例】従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れる最適なツール日々の気分や体調を入力・共有できるコンディション管理ツール従業員アンケートの作成・集計・分析が可能なシステムエンゲージメント調査を支援する外部サービス など目的に応じて最適なツールを選定し、得られたデータをもとに施策の実施と改善を継続的に行うことが、ウェルビーイング経営の推進において鍵となります。よくある質問(FAQ)Q1.ウェルビーイング経営と健康経営の違いは何ですか?ウェルビーイング経営と健康経営の違いは、視点と対象範囲にあります。健康経営は、企業が主体となって従業員の身体的・精神的な健康を管理するトップダウン型の取り組みです。一方、ウェルビーイング経営は、従業員の視点に立ち、健康だけでなく社会的な充足感や人生全体の幸福度の向上を目指すボトムアップ型の経営手法です。健康経営を土台としながら、より広範で包括的なアプローチへと発展したものといえます。Q2.中小企業でもウェルビーイング経営は実践できますか?ウェルビーイング経営の導入にあたって、大規模な投資は必ずしも必要ではありません。まずは、労働時間の適正化や有給休暇の取得促進、1on1ミーティングの実施など、コストをかけずに始められる施策から着手しましょう。従業員満足度調査によって現状を把握し、自社の課題に応じた取り組みを段階的に進めていくことが、効果的な推進につながります。Q3.ウェルビーイング経営の効果はどのように測定すればよいですか?ウェルビーイング経営の効果を測定するには、主観的・客観的な両面からのアプローチが有効です。まず、従業員満足度調査やエンゲージメント調査を定期的に実施し、主観的ウェルビーイングを把握しましょう。加えて、離職率、採用応募数、生産性、欠勤率、医療費などの客観的データも継続的に追跡することで、施策の成果を可視化できます。さらに、ポジティブ感情・積極性・人間関係・意味・達成感の5要素からなる「PERMAモデル」に基づいた評価を取り入れることで、より多角的な分析が可能になります。Q4.ウェルビーイング経営で最初に取り組むべきことは何ですか?ウェルビーイング経営の推進には、まず経営層やマネジメント層の意識改革が欠かせません。上司が率先して新しい働き方を実践することで、従業員も制度を前向きに活用しやすくなります。次に、従業員満足度調査を通じて現状を把握し、労働環境の改善やメンタルヘルスケアの充実など、自社の課題に応じて優先順位を整理しながら、段階的に取り組むことが効果的です。Q5.リモートワーク環境でもウェルビーイング経営は可能ですか?もちろん可能です。むしろリモートワークの普及に伴い、コミュニケーションの希薄化やエンゲージメントの低下が課題となっている今、ウェルビーイング経営の重要性は一層高まっています。オンライン1on1の実施やチャットツールを活用した感謝のメッセージの共有、バーチャル懇親会の開催、コンディション管理ツールの導入など、リモート環境に適した施策を通じて、従業員のつながりや心理的安全性を支える取り組みが求められます。Q6.ウェルビーイング経営はSDGsとどう関係していますか?ウェルビーイング経営は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」および目標8「働きがいも経済成長も」の達成に直結する取り組みです。従業員やステークホルダーの幸福を追求することは、持続可能な社会の実現に貢献すると同時に、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにもつながります。こうした姿勢は、投資家や取引先からの信頼や評価の向上にも寄与すると期待されています。ESG経営との関連性については、ESG経営とは?SDGsとの関係や企業が取り組むメリットを解説で詳しく紹介しています。まとめ最後に、ウェルビーイング経営の要点を以下に整理します。ウェルビーイング経営の定義企業に関わるすべての人の幸福を重視し、心身ともに健やかで社会的にも満たされた働き方を目指す経営手法です。社会的背景と戦略性労働人口の減少やSDGsへの対応が求められる中、企業の競争力を高める重要な戦略として注目されています。企業へのメリット離職率の低下、採用力の向上、生産性の改善、企業価値の向上など、多面的な効果が期待できます。推進のポイント労働環境の整備、メンタルヘルス支援、コミュニケーションの活性化、従業員満足度調査による現状把握が重要です。活用すべきフレームワークPERMAモデルなどを活用し、自社の状況に応じて段階的に取り組むことが効果的です。ウェルビーイング経営は、これからの時代に不可欠な経営手法です。しかしながら、「何から始めればよいか分からない」「社内にノウハウを持つ人材がいない」「人事部門のリソースが不足している」といった課題を抱える企業も少なくありません。ウェルビーイング経営の推進に、プロ人材という選択肢ウェルビーイング経営を成功させるには、PERMAモデルに基づいた施策設計や、エンゲージメントサーベイの実施・分析、メンタルヘルスケア体制の構築など、専門的な知見と実行力が求められます。しかし、「人事・組織開発の経験を持つ専任担当者がいない」「日常業務に追われ、新たな制度設計に割けるリソースがない」といった課題を抱える企業も少なくありません。こうした壁を乗り越える手段として、外部プロ人材の活用が有効です。たとえば、人事制度設計やタレントマネジメントに精通したHRプロフェッショナルが、従業員満足度調査の設計から分析、1on1制度の導入支援、コミュニケーション活性化施策の実行まで、戦略と現場の両面で伴走します。プロと共に施策を進める過程で、ノウハウが社内に蓄積され、支援終了後も自走できる組織へと成長を促します。「まずは週1回の壁打ち相手として」「特定の施策だけ任せる形で」など、スモールスタートから始めることも可能です。ウェルビーイング経営の実現を、マイナビProfessionalと共に「従業員満足度調査の設計方法がわからない」「施策を実行できる人材が社内にいない」「人事部門のリソースが不足している」——ウェルビーイング経営の重要性は理解しているものの、こうした課題を感じている方も多いのではないでしょうか。マイナビProfessionalは、人事・組織開発領域に精通したプロ人材が、ウェルビーイング経営の戦略立案から現場での実行までを一気通貫で支援するサービスです。エンゲージメントサーベイの設計・分析、メンタルヘルスケア体制の構築、1on1制度の導入支援、コミュニケーション活性化施策の推進など、本記事で紹介した施策を実務レベルで推進できる即戦力人材が、貴社の組織課題に合わせて伴走します。6万人超のプロ人材データベースから最適なHR領域のスペシャリストをご提案し、最短3週間で協働を開始できるため、「今期中に離職率改善の成果を出したい」というスピード感にも対応可能です。さらに、プロと共に施策を進める過程でノウハウが社内に蓄積され、支援終了後も自走できる組織へと成長を促します。「まずは現状の課題を整理したい」「どんな人材がいるか知りたい」という段階でも構いません。まずはサービス資料をご覧いただき、お気軽にご相談ください。参考文献・出典[1]国連諮問機関SDSN「World Happiness Report」2025年https://files.worldhappiness.report/WHR25.pdf?_gl=11dgcadj_gcl_au*MTA4NDYxMDgxNS4xNzYxOTQ3NDcx[2]帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)」https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241113-laborshortage202410/[3]日本商工会議所「「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」の集計結果について ~中小企業の約6割が外部シニア人材の受入れに前向き~」2024年https://www.jcci.or.jp/news/research/2024/0905140000.html[4]厚生労働省「時間外労働の上限規制|分かりやすい解説」2019年https://www.mhlw.go.jp/content/001140962.pdf[5]日経クロストレンド「「仕事が好き」は大幅減 最新調査で判明した「働く」意識の激変」2025年https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00401/00059/[6] [10]SRM学会「SDGs経営の促進と企業価値向上につながるWell-beingの取組み」2024年https://social-rms.com/imagesWP/pdf/activitydoc/ac20241116_inoue.pdf[7]第一生命経済研究所「ここが知りたい『国民全体の幸せの指標、GDW(Gross Domestic Well-being)に注目』」2022年https://www.dlri.co.jp/report/dlri/179355.html[8]厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」2023年https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf[9]FiNC for BUSINESS「ウェルビーイング経営導入の成功パターン|具体データで学ぶ社員満足度アップ戦略」2025年https://biz.finc.com/blog/c86[11]専修大学「幸福経営に関する理論と調査結果に関する研究」2022年https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/records/12552[12]アステリア「企業のウェルビーイングへの取り組みと業績に関する実態調査を発表「取り組んでいる企業は約5割」「取り組む企業はより高い収益成長を記録」」2023年https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000339.000010008.html[13]Wellhub「Wellhub Study Reveals Strong Return on Investment for Corporate Wellness Programs」2025年Wellhub Study Reveals Strong Return on Investment for Corporate Wellness Programs[14]MUFG資産形成研究所「従業員ウェルビーイングと企業業績の分析」2025年https://www.tr.mufg.jp/shisan-ken/pdf/kinnyuu_literacy_27.pdf