新規事業の人材不足、採用以外に打つ手はないのか?新規事業を任されたものの、社内に経験者がいない。採用市場にも欲しい人材が見つからない。こうした人材不足は、新規事業の現場で頻繁に起こる課題です。しかし、「人を増やす」だけが解決策ではありません。事業の進め方を見直し、社内リソースを最適化し、外部人材やテクノロジーを組み合わせれば、少人数でも事業を前に進めることは十分に可能です。本記事では、現場で実行できる具体的な解決策を、設計・社内活用・外部活用・テクノロジーの4つの観点から整理して解説します。本記事でわかること少人数でも回せる新規事業の設計方法(MVP・スコープ絞り込み)兼務体制・社内公募で社内リソースを最大化する方法業務委託・副業人材・開発パートナーの戦略的な選び方生成AI・ノーコード・自動化ツールで省人化する具体策少人数でも回る新規事業の設計方法とは? 人手不足に直面したとき、多くの企業は「人を増やす」ことを前提に考えがちです。しかし実際には、事業の進め方そのものを見直すことで、少人数でも前に進める状態を作れます。 重要なのは、最初から理想的な体制を整えることではありません。限られたリソースでも成立する形に事業を設計し直し、段階的に拡大していくことです。こうした考え方を取り入れると、人手不足でも着実に成果を積み上げられるようになります。 設計方法1:MVP検証で最小限のリソースから始める 新規事業においては、最初から完成度の高いサービスをつくる必要はありません。むしろ、最小限の機能で市場に出し、検証しながら改善するほうが効率的です。MVP(Minimum Viable Product)は、顧客に価値を提供できる最低限の状態の製品やサービスを指します。この手法では、開発に時間や人員をかける前に、実際の顧客反応をもとに仮説を検証していきます。たとえばBtoBサービスであれば、システムを開発せずにスプレッドシートや手作業で業務を代替し、サービスを疑似的に提供することも可能です。この段階であれば、担当者1〜2名でも十分に検証を回せます。ポイントは、「何をつくるか」ではなく「何を検証するか」を先に決めることです。検証すべき仮説が明確になれば、必要な作業や人員も自然と絞り込まれます。 設計方法2:事業スコープを絞って段階的に拡大する 少人数で進める新規事業では、最初からスコープを広げすぎないことが重要です。機能やターゲットを欲張るほど、リソース不足に陥りやすくなります。有効なのは、事業を段階ごとに区切って進める方法です。まずは1〜2名で仮説検証に集中する「構想・検証期」。次に3〜5名体制で顧客獲得と収益化を目指す「事業化期」。そして成果に応じて人員を拡大する「拡大期」という流れです。フェーズごとに必要なリソースを分けて考えることで、無理のない計画を立てられます。また、「最初から大人数が必要」という前提を崩せるため、社内の意思決定も通りやすくなります。設計方法3:「やらないこと」を決めてリソースを集中させる 少人数チームで成果を出すには、やることを増やすのではなく、やらないことを明確にすることが不可欠です。限られたリソースを分散させると、どの施策も中途半端に終わります。重要なのは、事業の成否に直結するタスクへ集中することです。判断の軸としては、「事業仮説の検証に直結するか」と「今やらなければ取り返しがつかないか」の2点が有効です。顧客ニーズの確認や収益モデルの検証といった核心部分を優先し、それ以外は後回しにします。たとえばロゴ制作や詳細なマニュアル整備は、初期段階では優先度が高くありません。こうしたタスクを意図的に後回しにすることで、少人数でも事業の本質に集中できる体制を維持できます。 社内リソースを最大化する方法|人を増やさず成果を出す3つの打ち手人手不足を理由に外部リソースへ頼る前に、まず見直すべきなのは社内にあるリソースの使い方です。新規採用や外注にはコストも時間もかかります。一方で、既存メンバーの関わり方を変えるだけで、事業を前進させられるケースは少なくありません。 ここでは、少人数でも成果を出すために有効な3つの方法を解説します。 打ち手1:マネジメントで兼務体制を機能させる 新規事業の初期段階では、専任メンバーを確保できず、既存業務と兼務で進めるケースが少なくありません。問題になるのは兼務そのものではなく、役割や時間配分が曖昧なまま進んでしまうことです。兼務体制を機能させるには、まず稼働時間を明確にしましょう。「週の20%を新規事業に充てる」といった形で具体的に定義し、本人だけでなく既存事業側の上長とも合意しておくことが重要です。あわせて、週1回・30分程度の短時間ミーティングを設定し、進捗と課題を共有します。長時間の会議は不要で、意思決定と障害の解消に絞ることがポイントです。さらに見落とされがちなのが評価指標です。新規事業を既存事業と同じ基準で評価すると、短期的な売上が出ない段階では不利になります。仮説検証の回数や顧客ヒアリング数など、新規事業専用のKPIを設定し、取り組み自体を正当に評価できる状態を構築しましょう。 打ち手2:社内公募・異動で新規事業人材を見つける 新規事業に適した人材は、必ずしも現在の担当部署に現れているとは限りません。むしろ、別の業務を担当しながら意欲を持っている人材が埋もれているケースも多くあります。こうした人材を発掘する手段として有効なのが、社内公募や異動の仕組みです。自ら手を挙げる人材は意欲が高く、主体的に動ける可能性が高いというメリットがあります。ただし、制度を用意するだけでは機能しません。既存部署の上長が異動を止めてしまったり、情報が一部にしか届かなかったりと、運用面でつまずくことが多いためです。これを防ぐには、経営層が公募の意義を全社に明確に発信し、挑戦を歓迎する姿勢を示すことが欠かせません。また、応募段階では「週1日の参加」など小さな関わりから始められる設計にすることで、心理的なハードルを下げることも有効です。打ち手3:実務を通じて新規事業人材を育成する新規事業に必要なスキルは、座学だけで身につくものではありません。実際の事業開発プロセスに関わる中で、試行錯誤を経験することが最も効果的な育成方法です。たとえば、まずは経験のあるリーダーのもとでサブメンバーとして参加し、全体の流れを理解させます。その後、小規模な検証プロジェクトのリーダーを任せ、意思決定の経験を積ませるのです。必要に応じて外部の研修やアクセラレーターを活用し、社外の知見を取り入れることで視野を広げることも有効といえます。重要なのは評価制度です。新規事業は失敗を前提とした取り組みであり、挑戦の回数そのものが価値になります。失敗によって評価が下がる環境では、誰もリスクを取りません。挑戦そのものを評価する仕組みを整えることで、人材の成長と事業の前進を両立できます。外部リソースを新規事業で戦略的に活用する方法社内リソースだけでは人手不足で新規事業の展開に限界がある場合、外部の人材やパートナーを戦略的に活用することが現実的な解決策です。この場合、フルタイム採用にこだわらず、必要なスキルを必要な期間だけ調達する柔軟な発想が求められます。 方法1:業務委託・フリーランスを活用して専門スキルを補う 業務委託やフリーランスの活用は、特定のスキルを短期間で調達できる点が最大のメリットです。デザイン、開発、マーケティングなど、社内にない専門スキルをピンポイントで補えます。活用を成功させるには、業務の切り出し方が鍵です。「新規事業を手伝ってほしい」という曖昧な依頼では成果が出ません。「ランディングページのデザインと実装を3週間で作成してほしい」「競合10社の市場調査レポートを2週間でまとめてほしい」など、成果物・完成度・期限を明確に定義しましょう。また、社内メンバーとのコミュニケーション設計も重要です。週1回でもいいので、定例ミーティングとチャットツールでの日常的なやり取りを組み合わせると、リモートでもスムーズに連携できます。 方法2:副業・複業人材を活用して外部の知見を取り入れる 副業を認める企業は増加傾向にあり、大手企業の現役社員や経験豊富なプロフェッショナルが副業人材として活躍する機会が広がっています[1]。副業人材の強みは、フルタイム採用では出会えない層にアクセスできる点です。たとえば、大手メーカーで新規事業開発を経験した現役マネージャーに、一定時間だけアドバイザーとして参画してもらうといった活用の仕方もできます。活用のポイントは、関わり方を段階的に設計することです。たとえば月2回のオンライン壁打ちから始め、相性や成果を確認したうえで稼働時間を増やすと、リスクを抑えつつ効果を期待できます。 方法3:開発パートナー・外部ベンダーを見極めて選定するプロダクト開発やシステム構築を外部に委託する場合、パートナー選びが事業の成否を左右します。価格だけで選ぶと、コミュニケーションコストが膨らみ、結果的に非効率になるケースも少なくありません。選定時には、以下の基準をもとに判断することが重要です。 新規事業の開発経験がある大規模な受託開発の実績よりも、MVP開発やアジャイル開発の経験があるかを確認します。 仕様変更への柔軟性があるか仮説検証の過程では方向転換が頻繁に発生するため、準委任契約など柔軟に対応できる体制であるかを見極めます。 事業の目的を理解しようとする姿勢があるか指示された内容を実装するだけでなく、目的を踏まえて提案できるパートナーであるかを確認します。 これらの観点で選定することで、単なる外注先ではなく、事業推進を支えるパートナーとして機能させることができます。 AIとノーコードツールを活用して省人化を実現する 生成AIやノーコードツールの普及により、少人数チームでも対応できる業務の幅は広がっています。人手に依存していた作業をテクノロジーで置き換えることで、限られたリソースでも事業を前進させられます。 人手不足への対処は採用や外注に偏りがちですが、「そもそも人手が必要か」を見直す視点も欠かせません。 活用方法1:生成AIを活用して企画・リサーチ・資料作成を効率化する 新規事業の初期段階では、市場調査や資料作成など時間のかかる業務が多く発生します。生成AIを使えば、これらの下準備を短時間で整えられます。市場動向や競合情報の整理、事業計画書のたたき台作成、顧客インタビューの要約、プレゼン資料のドラフト作成などは、生成AIを利用すればゼロから作る必要がありません。叩き台をもとに精度を高める進め方に変えるだけで、作業効率は大きく向上します。ただし、生成AIの出力はそのまま使えるものではない点には注意しましょう。事実確認や自社文脈への落とし込みは人が担う必要があります。意思決定はあくまで人間が行う前提で活用します。 活用方法2:ノーコード・ローコードツールを活用してプロトタイプを内製する 従来はエンジニアを採用してから開発に着手するのが一般的でしたが、ノーコード・ローコードツールの普及により、この前提は変わっています。現在は、プログラミングスキルがなくても、Webサイトやランディングページの作成、業務アプリの構築、データの可視化まで対応可能です。アイデア段階でも、短期間で「使える形」に落とし込めます。重要なのは、検証を先行できる点です。ノーコードでプロトタイプを作り、顧客の反応を確認したうえで本格開発に進むという順序に変えることで、無駄な投資を抑えながら意思決定の精度を高められます。活用方法3:業務自動化ツールを活用してバックオフィス工数を削減する 少人数チームでは、コア業務にどれだけ時間を割けるかが成果を左右します。そのためには、バックオフィス業務の自動化が有効です。請求書や見積書の作成、定型メールの送信、データ入力・転記、スケジュール調整といった業務は、ツールによって自動化が可能です。手作業を減らすことで、事業開発に直接関係する業務へリソースを集中できます。実際に、RPAソリューションの導入によって業務時間を大幅に削減した事例も報告されています。金融機関における導入例では、定型業務の自動化により年間3,600時間の削減効果を確認。週単位に換算すると、数時間から十時間程度の工数削減に相当します。[2]なお、削減した時間を顧客検証や意思決定に回せるかどうかが、事業の進行速度を左右する点を意識しましょう。少人数体制での新規事業展開は、この差がそのまま成果の差になります。よくある質問(FAQ) 新規事業の立ち上げでは、「何人必要か」「どの程度リソースを割くべきか」など判断に迷いやすいポイントが多くあります。ここでは、現場でよくある疑問に対して実務ベースで回答します。自社の状況に当てはめながら、次の一手を具体化する参考にしてください。 Q1. 新規事業チームの最適な人数は何名ですか? フェーズによって異なりますが、構想・検証期は少人数で意思決定のスピードを優先することが重要です。一般的には2〜3名程度の体制からスタートし、事業化フェーズで顧客獲得や収益化の必要性が高まった段階で段階的に増員する進め方が現実的です。 Q2. 兼務メンバーは新規事業にどのくらいの時間を割くべきですか? 兼務体制では、新規事業に一定の時間を確保できるかが成果を左右します。実務上は、既存業務の合間ではなくまとまった時間を確保することが重要であり、週の中で特定の曜日を新規事業に充てるなど、集中して取り組める環境を整えることが効果的です Q3. 副業人材やフリーランスの費用相場はどのくらいですか? 費用はスキルや関与度によって大きく異なりますが、一般的には関与範囲と成果物に応じて個別に見積もられるケースが多く、一概に相場を断定することは難しいです。重要なのは金額そのものではなく、期待する成果と稼働内容を明確にし、費用対効果で判断することです。 Q4. 生成AIを新規事業に活用する際の注意点は? 生成AIの出力には事実誤認や偏りが含まれる可能性があるため、そのまま利用せず人によるファクトチェックを行う必要があります。また、機密情報や個人情報の取り扱いには注意し、社内ガイドラインを整備したうえで利用することが重要です。生成AIは意思決定を代替するものではなく、情報収集や資料作成の初速を高めるツールとして活用するのが適切です。 Q5. 経営層に新規事業のリソース追加を提案するコツは? 経営層への提案では、「人が足りない」という主観的な説明ではなく、現状のリソースでどこまで進められているかと、追加投資によってどのような成果が見込めるかを具体的に示すことが重要です。仮説検証の数や意思決定までの期間など、事業進行に直結する指標で説明することで、投資の妥当性を伝えやすくなります。 まとめ 新規事業の人手不足は、多くの企業が直面する課題ですが、対応の余地は十分にあります。解決策を見つけるポイントは、人を増やす前に「進め方」を見直すことです。 まずは、MVP検証やスコープの絞り込みによって、少人数でも回せる設計になっているかを確認します。今の体制でもすぐに変えられる部分を切り出しましょう。そのうえで、兼務体制の運用や社内公募を通じて、既存メンバーの関わり方を最適化できないかを見直します。 それでも不足する部分については、業務委託や副業人材を活用し、必要なスキルだけを補う形で外部リソースを取り入れます。あわせて、生成AIやノーコードツール、業務自動化によって、そもそも人手が必要な作業を減らす視点も重要です。 人手不足を前提にしながらも、進め方を調整していく工夫の積み重ねが、新規事業を前に進める現実的なアプローチになります。 新規事業の人手不足を突破する、プロ人材という選択肢 新規事業の人手不足を乗り越えるには、事業設計の工夫やテクノロジー活用に加え、「必要な経験・スキルを持つ人材を、必要なタイミングで確保する」ことが欠かせません。しかし、フルタイム採用は時間もコストもかかり、新規事業の不確実性が高い初期段階では踏み切りにくいのが現実です。 そこで有効なのが、新規事業開発の経験を持つプロ人材の活用です。事業戦略の壁打ち相手として、あるいはマーケティングや事業企画の実務推進役として、社内にないノウハウと実行力を補完できます。週1回の稼働や3ヶ月の短期プロジェクトから始められるため、リスクを抑えながら事業推進のスピードを高められます。 新規事業の人材課題を解決する「マイナビProfessional」 「新規事業を任されたが、社内に経験者がいない」「採用する余裕はないが、専門的な知見がほしい」。こうした課題を抱える企業に向けて、マイナビProfessionalは6万人超のプロ人材データベースから最適な人材をマッチングします。新規事業開発、マーケティング、事業戦略など、記事で紹介した施策を実行に移すための専門人材が揃っています。 最短3週間で協働を開始でき、1名から・最短3ヶ月から柔軟に契約可能です。企業担当と人材担当の2名体制で伴走するため、「どんな人材が必要かわからない」という段階からでも相談できます。プロ人材との協働を通じて社内にノウハウが蓄積される点も、一時的な外注とは異なる大きなメリットです。 まずは資料請求や無料相談で、自社の新規事業に必要な人材像を整理するところから始めてみてください。 参考文献・出典 [1] 広報誌ファイナンス「副業の実態把握」 https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/2025010/202510e.pdf?utm_source=chatgpt.com [2]株式会社NTTデータ中国「山陰合同銀行にてRPAソリューション「WinActor」の本格運用を開始」 https://www.nttdata-chugoku.co.jp/information/2018/20180313-261.html?utm_source=chatgpt.com