新規事業の人手不足は、採用に頼らなくても乗り越えられる新規事業を任されたものの、社内に経験者がいない。採用市場にも欲しい人材が見つからない。こうした人材不足は、新規事業の現場で頻繁に起こる課題です。しかし、「人を増やす」だけが解決策ではありません。むしろ増員の前にやるべきは、“人を増やさなくても回る状態”をつくること——つまり省人化です。事業の進め方を見直し、社内リソースを最適化し、外部人材やテクノロジーを組み合わせれば、少人数でも事業を前に進めることは十分に可能です。本記事では、採用に頼らず少人数で前に進むための打ち手を、「省人化の4ステップ」として整理して解説します。本記事でわかること少人数で回る事業設計(MVP・スコープ・やらないこと)今いる社内人材で回す(兼務・社内公募・育成)雇わずに補う外部リソース活用(委託・副業・パートナー)AI・ノーコードで“人手そのもの”を減らす省人化なぜ「増員」より先に「省人化」か|採用に頼らない発想人手不足への対処は、大きく補充(採る・借りる)省人化(そもそも要らなくする)の2つに分かれます。採用や増員は時間もコストもかかり、不確実性の高い新規事業の初期では決裁も通りにくいのが実情です。そこで本記事は、増員の前に“人を増やさなくても回る状態”をつくる省人化の視点で4ステップを示します。【関連記事】なお、人材不足を網羅的に解決する社内・外部リソースの活用術は、別記事「新規事業の人材不足を解決する11の方法|社内・外部リソース活用術」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。ステップ1:少人数で回る事業設計(MVP・スコープ・やらないこと)人手不足に直面したとき、多くの企業は「人を増やす」ことを前提に考えがちです。しかし実際には、事業の進め方そのものを見直すことで、少人数でも前に進める状態を作れます。重要なのは、最初から理想的な体制を整えることではありません。限られたリソースでも成立する形に事業を設計し直し、段階的に拡大していくことです。設計方法1:MVP検証で最小限のリソースから始める新規事業では、最初から完成度の高いサービスをつくる必要はありません。MVP(Minimum Viable Product:顧客に価値を提供できる最低限の製品)で市場に出し、検証しながら改善するほうが効率的です。BtoBサービスなら、システムを開発せずスプレッドシートや手作業で代替し、担当者1〜2名でも検証を回せます。ポイントは「何をつくるか」より「何を検証するか」を先に決めることです。【関連記事】MVP検証の具体的な手順や撤退・ピボットの判断基準は、別記事「MVP検証の方法|新規事業で迷わない7ステップと判断基準を解説」「MVP検証の失敗原因7つ|ピボット・継続・撤退の判断基準を解説」で詳しく解説しています。設計方法2:事業スコープを絞って段階的に拡大する機能やターゲットを欲張るほどリソース不足に陥ります。まず1〜2名で仮説検証に集中する「構想・検証期」、次に3〜5名で顧客獲得と収益化を目指す「事業化期」、成果に応じて増やす「拡大期」と区切ると、無理のない計画を立てられ、社内の意思決定も通りやすくなります。設計方法3:「やらないこと」を決めてリソースを集中させるやることを増やすのではなく、やらないことを明確にします。判断軸は事業仮説の検証に直結するか今やらなければ取り返しがつかないかの2点です。ロゴ制作や詳細なマニュアル整備などは初期の優先度が低く、意図的に後回しにすることで本質に集中できます。ステップ2:今いる社内人材で回す(兼務・社内公募・育成)外部リソースに頼る前に、まず社内の使い方を見直します。新規採用や外注はコストも時間もかかりますが、既存メンバーの関わり方を変えるだけで前進できるケースは少なくありません。打ち手1:マネジメントで兼務体制を機能させる問題は兼務そのものではなく、役割や時間配分が曖昧なまま進むことです。「週の20%を新規事業に充てる」と具体的に定義し、既存事業側の上長とも合意します。週1回・30分の短時間ミーティングで進捗と障害解消に絞り、評価は売上ではなく仮説検証の回数や顧客ヒアリング数など新規事業専用のKPIで行います。打ち手2:社内公募・異動で新規事業人材を見つける適性ある人材は現部署に現れているとは限りません。自ら手を挙げる人は意欲が高く主体的に動けます。制度を用意するだけでなく、経営層が公募の意義を全社発信し、「週1日の参加」など小さく始められる設計でハードルを下げることが有効です。打ち手3:実務を通じて新規事業人材を育成する必要なスキルは座学では身につきません。経験あるリーダーの下でサブメンバーとして全体像を理解させ、小規模な検証プロジェクトのリーダーを任せて意思決定を経験させます。挑戦の回数そのものを評価する仕組みが、人材の成長と事業の前進を両立させます。ステップ3:雇わずに補う外部リソース活用(委託・副業・パートナー)社内だけでは限界がある場合、フルタイム採用にこだわらず「必要なスキルを必要な期間だけ」調達する発想が有効です。方法1:業務委託・フリーランスで専門スキルを補うデザイン・開発・マーケティングなど社内にないスキルを短期間でピンポイントに補えます。鍵は業務の切り出し方です。「ランディングページの設計と実装を3週間で」など成果物・完成度・期限を明確にし、週1の定例+チャットで連携します。【関連記事】依頼の進め方や人材の見極めは「人手不足を解消する5つの方法|原因・選び方・企業事例まで解説」「業務委託人材の選び方・見極め方|7つの評価軸とそのまま使える質問リスト」も参考になります。方法2:副業・複業人材で外部の知見を取り入れる副業を認める企業は増え、大手の現役社員やプロフェッショナルにアクセスできます。月2回のオンライン壁打ちから始め、相性や成果を見て稼働を増やすと、リスクを抑えつつ効果を見込めます。【関連記事】活用の始め方や失敗パターンは「副業人材の活用とは|メリット・デメリット10選と対策・正社員との比較を徹底解説」「副業人材活用の始め方|失敗6パターンと成功企業の共通点」で解説しています。方法3:開発パートナー・外部ベンダーを見極めて選ぶ価格だけで選ぶとコミュニケーションコストが膨らみます。新規事業(MVP・アジャイル)の開発経験仕様変更への柔軟性(準委任など)目的を理解し提案する姿勢の3点で見極めると、単なる外注先でなく事業推進のパートナーになります。ステップ4:AI・ノーコードで“人手そのもの”を減らす省人化採用や外注が“人を補う”手段だとすれば、最後の一手は“人手そのものを要らなくする”ことです。生成AIやノーコードツールの普及により、少人数チームでも対応できる業務の幅は広がっています。人手不足の対処は採用・外注に偏りがちですが、「そもそも人手が必要か」を見直す——これが省人化の核心といえます。活用方法1:生成AIで企画・リサーチ・資料作成を効率化する市場動向や競合情報の整理事業計画書のたたき台顧客インタビューの要約プレゼン資料のドラフト作成などは、生成AIを活用することでゼロから作る必要がなくなります。ただし出力はそのまま使わず、事実確認と自社文脈への落とし込みは人が担い、意思決定は人間が行う前提で活用します。【関連記事】導入手順は「生成AI導入で業務効率化!7ステップで企画から活用までの手順を解説」で詳しく解説しています。活用方法2:ノーコード・ローコードでプロトタイプを内製するエンジニアを採用してから着手する前提は変わりました。プログラミングなしでWebサイトやLP、業務アプリ、データ可視化まで対応でき、アイデア段階でも短期間で「使える形」に落とせます。プロトタイプで顧客反応を確認してから本格開発に進めば、無駄な投資を抑えられます。【関連記事】ノーコードでの自動化・内製化は「AIエージェントの作り方|ノーコードDifyで業務を自動化する方法」「専門人材ゼロからのAI内製化|ノーコードで実現する現実的なロードマップ」が参考になります。活用方法3:業務自動化ツールでバックオフィス工数を削減する請求書・見積書作成定型メール送信データ入力・転記スケジュール調整などはツールで自動化できます。RPA導入で定型業務を自動化し、金融機関で年間3,600時間を削減した事例も報告されています。これらの工夫で削減した時間を顧客検証や意思決定に回せるかが、少人数体制の事業速度を左右します。よくある質問(FAQ) 新規事業の立ち上げでは、「何人必要か」「どの程度リソースを割くべきか」など判断に迷いやすいポイントが多くあります。ここでは、現場でよくある疑問に対して実務ベースで回答します。自社の状況に当てはめながら、次の一手を具体化する参考にしてください。 Q1. 新規事業チームの最適な人数は何名ですか? フェーズによって異なりますが、構想・検証期は少人数で意思決定のスピードを優先することが重要です。一般的には2〜3名程度の体制からスタートし、事業化フェーズで顧客獲得や収益化の必要性が高まった段階で段階的に増員する進め方が現実的です。 Q2. 兼務メンバーは新規事業にどのくらいの時間を割くべきですか? 兼務体制では、新規事業に一定の時間を確保できるかが成果を左右します。実務上は、既存業務の合間ではなくまとまった時間を確保することが重要であり、週の中で特定の曜日を新規事業に充てるなど、集中して取り組める環境を整えることが効果的です Q3. 副業人材やフリーランスの費用相場はどのくらいですか? 費用はスキルや関与度によって大きく異なりますが、一般的には関与範囲と成果物に応じて個別に見積もられるケースが多く、一概に相場を断定することは難しいです。重要なのは金額そのものではなく、期待する成果と稼働内容を明確にし、費用対効果で判断することです。 Q4. 生成AIを新規事業に活用する際の注意点は? 生成AIの出力には事実誤認や偏りが含まれる可能性があるため、そのまま利用せず人によるファクトチェックを行う必要があります。また、機密情報や個人情報の取り扱いには注意し、社内ガイドラインを整備したうえで利用することが重要です。生成AIは意思決定を代替するものではなく、情報収集や資料作成の初速を高めるツールとして活用するのが適切です。 Q5. 経営層に新規事業のリソース追加を提案するコツは? 経営層への提案では、「人が足りない」という主観的な説明ではなく、現状のリソースでどこまで進められているかと、追加投資によってどのような成果が見込めるかを具体的に示すことが重要です。仮説検証の数や意思決定までの期間など、事業進行に直結する指標で説明することで、投資の妥当性を伝えやすくなります。 まとめ:採用に頼らず、省人化4ステップで前に進める新規事業の人手不足は、採用や増員に頼らずとも乗り越えられます。ポイントは、人を増やす前に“人を増やさなくても回る状態(省人化)”をつくることです。まず少人数で回る設計(MVP・スコープ・やらないこと)に整え今いる社内人材の関わり方を最適化し足りない部分は雇わずに外部で補いAI・ノーコードで人手そのものを減らす。この4ステップを、自社の予算・フェーズに合わせて選び取ってください。自社のボトルネック(どの工程・役割が不足か)を特定し、4ステップから2〜3施策を選び、小さく試すこと。この積み重ねが、少人数でも新規事業を前に進める現実的なアプローチになります。採用に頼らない新規事業を、プロ人材で前に進める 採用に頼らず事業を前に進めるうえで有効なのが、新規事業開発の経験を持つプロ人材の活用です。事業戦略の壁打ち相手として、あるいは事業企画・マーケティングの実務推進役として、社内にないノウハウと実行力を補完できます。マイナビProfessionalは6万人超のプロ人材データベースから最適な人材をマッチング。最短3週間で協働を開始でき、1名から・最短3ヶ月から柔軟に契約可能です。企業担当と人材担当の2名体制で伴走するため、「どんな人材が必要かわからない」段階からでも相談できます。まずはお気軽に資料をご確認ください。参考文献・出典 [1] 広報誌ファイナンス「副業の実態把握」 https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/2025010/202510e.pdf?utm_source=chatgpt.com [2]株式会社NTTデータ中国「山陰合同銀行にてRPAソリューション「WinActor」の本格運用を開始」 https://www.nttdata-chugoku.co.jp/information/2018/20180313-261.html?utm_source=chatgpt.com