なぜインサイドセールスの採用は難しいのか?インサイドセールス(以下IS)部門の立ち上げや増員において、「経験者の応募が集まらない」「採用してもすぐ辞めてしまう」と悩む企業が増えています。中途採用に頼った人材確保は、IS経験者市場の供給不足と平均在籍期間の短さという構造的な壁にぶつかりやすいのが実情です。解決の起点は、採用以外の選択肢を含めて確保手段の全体像を整理することにあります。中途採用、新卒・第二新卒、社内異動、未経験者の育成、業務委託・BPO、副業・フリーランス活用――この6つの手段を予算・緊急度・組織フェーズに応じて組み合わせれば、IS人材確保はコントロール可能な経営課題に変わります。本記事では、6つの確保方法をコスト・期間・難易度の3軸で比較し、自社に合った選び方の判断軸を具体的に解説します。本記事でわかることインサイドセールスの人材確保が難しい3つの構造的理由求めるべきスキルと適性、採用要件の整理方法6つの人材確保方法(採用・育成・外注)のメリット・デメリット比較予算・緊急度・組織フェーズ別の最適な選び方とコスト・期間・難易度の一覧比較採用後のミスマッチや早期離職を防ぐポイントインサイドセールスの人材確保が難しい3つの理由インサイドセールス人材の確保が難しい背景には、個社の採用力だけでは解決できない構造的な3つの要因があります。確保手段を選ぶ前に、なぜ確保しにくいのかを正しく把握しておくと、自社に合った現実的な打ち手を選びやすくなります。理由1:インサイドセールス経験者の母数が少ない インサイドセールスは日本では比較的新しい職種であり、十分な実務経験を持つ人材の母数が限られています。特に、戦略設計やKPI管理まで担えるマネージャー・リーダークラスは市場に出回りにくく、企業間での取り合いになりやすい傾向があります。その結果、求人を出しても応募が集まらない、あるいは採用までに時間がかかるといった状況が起こりやすくなるのです。加えて、IS経験者の平均在籍期間は約18ヶ月とする調査もあり、採用できても短期間で離職するリスクが構造的に存在します。経験者採用に依存すると、採用活動が長期化しやすい点は押さえておく必要があります。 理由2:求められるスキルが広く採用要件が定まりにくい インサイドセールスには、顧客ヒアリング、情報収集、データ分析、CRMツールの活用、メールコミュニケーションなど、複数のスキルが求められます。フィールドセールスとは異なる専門性が必要であり、営業経験があればそのまま活躍できるとは限りません。 さらに、分業型か一気通貫型かといった組織体制によって必要な役割も変わります。そのため、採用要件が曖昧になりやすく、結果としてミスマッチが発生しやすくなります。要件定義の難しさ自体が、採用難易度を押し上げる要因です。 理由3:営業職全体で人材獲得競争が激化している インサイドセールスに限らず、営業職全体で人材の獲得競争は激しくなっています。労働人口の減少により、企業間で人材を奪い合う構図が続いているためです。 特にIS求人は、転職サービスの調査によれば直近3年間で大幅に拡大している領域とされ、需給ギャップは縮まる兆しが見えていません。この影響で、インサイドセールス人材も他の営業職種と同じ市場で競合しなければならない状況です。条件面や働き方の魅力を明確に打ち出せない場合、候補者から選ばれにくくなります。 【関連記事】営業全体の人手不足対策は別記事の「営業の人手不足を解消する7つの方法」も一緒にご確認ください。インサイドセールス人材に求められる重要なスキルと適性 人材を採用・確保する前に、「どのようなインサイドセールス人材を探すべきか」を明確にしておくことが重要です。スキル要件が曖昧なまま採用や育成を進めると、ミスマッチや早期離職のリスクが高まります。まずは、インサイドセールスに求められるスキルと適性を整理しておきましょう。 インサイドセールスの必須スキル インサイドセールスの業務で求められるスキルは、大きく分けて3つに整理できます。なかでも土台となるのがヒアリング力です。見込み顧客の課題やニーズを引き出すには、単なる質問のやり取りにとどまらず、状況や問題点を整理しながら対話を深めることが欠かせません。SPIN話法のように、段階的に質問を組み立て、潜在的なニーズまで掘り下げられるかが重要です。 情報収集力も成果に直結します。顧客企業のIR情報や業界動向を事前に把握し、仮説を持ったうえでアプローチすることで、会話の質は大きく変わります。準備の精度が、そのまま商談化率に影響する領域です。 さらに、データ分析力も欠かせません。CRMやSFAに蓄積されたデータから傾向を読み取り、次のアクションに反映できるかどうかで、成果の再現性が変わります。継続的に改善できる営業体制をつくるうえでも重要なスキルです。 インサイドセールスに求められる適性 スキルに加えて、行動特性や思考パターンも成果に大きく影響します。インサイドセールスは短期的に結果が出る業務ではなく、見込み顧客との関係構築を積み重ねることが前提です。そのため、すぐに成果が出なくても取り組み続けられる粘り強さが求められます。 また、限られた情報から仮説を立て、筋道を立てて提案を組み立てる論理的思考も必要な適正です。加えて、架電結果やメールの反応を振り返り、自ら改善を重ねていく姿勢があるかどうかで、成長スピードに差が生まれます。 採用面接では、過去の業務でうまくいかなかった経験と乗り越え方を具体的に確認することで、これらの適性を見極めやすくなるでしょう。 未経験者でも活躍しやすい人材の特徴 インサイドセールスの経験がなくても、隣接する職種の経験を持つ人材は比較的早く戦力化できます。 たとえばカスタマーサポート経験者は、電話やメール対応に慣れており、傾聴力やホスピタリティを活かしやすいです。販売職経験者であれば、顧客のニーズを汲み取る力や提案力を応用できるでしょう。マーケティング経験者の場合は、データ分析やリード管理の知識を持っているため、業務全体の流れを理解しやすい傾向があります。 採用ターゲットを経験者だけに限定すると母集団が狭くなりやすいため、こうした隣接職種まで視野を広げることが、人材確保を現実的に進めるうえで有効です。 インサイドセールスの人材確保方法6選|採用・育成・業務委託を比較ここからは、インサイドセールス人材を確保する代表的な6つの方法を分けて整理します。それぞれに強みと制約があるため、単純な優劣ではなく、自社の状況に合わせて選択することが重要です。 方法1:経験者の中途採用 まずは、インサイドセールスの実務経験を持つ人材を中途で採用する方法です。最大の強みは、立ち上がりの早さにあります。業務プロセスやツールに慣れているため、オンボーディングにかかる負担を抑えながら、比較的短期間で成果につなげやすいのが特徴です。 一方で、経験者の母数が限られているため採用競争は激しく、想定通りに採用が進まないケースも少なくありません。条件面でも一定の水準が求められるため、採用にかかる期間の長期化を想定しておきましょう。採用ができれば短期間で成果を出しやすい方法ですが、採用難易度は他の方法と比べて高い傾向があります。 方法2:新卒・第二新卒採用 新卒や第二新卒を採用し、ポテンシャルを前提に育成していく方法は、自社の文化や営業プロセスに合わせてゼロから育てられるため、長期的な組織づくりには適しています。採用コストも比較的抑えやすく、将来的なコア人材を育成できる点が強みです。 ただし、戦力化までには一定の時間がかかります。育成体制が整っていない場合は、教育負荷が大きくなり、期待した成果につながらないリスクもあります。短期成果よりも中長期の組織強化を重視する企業に適した手段です。 方法3:社内異動・配置転換 既存社員をインサイドセールス部門に異動させる方法は、自社の商材や組織を理解している人材を活用できるため、立ち上がりが他の方法よりも比較的スムーズです。採用コストがかからず、最短で人員を確保できる点も大きなメリットです。 しかし、本人の意向や異動元部門との調整が必要なため、必ずしもスムーズに進むとは限りません。また、フィールドセールスとは求められるスキルが異なるため、営業経験があるという理由だけで適性を判断すると、期待した役割を果たせないリスクもあります。短期的に人員を補いたい場合には有効ですが、適性の見極めが難しい方法です。 方法4:未経験者の採用と社内育成インサイドセールス未経験の人材を採用し、研修やOJTを通じて育成する方法は、採用ターゲットを広げられることから母集団形成の面で有利になります。カスタマーサポートや販売職など、隣接スキルを持つ人材を取り込める点も特徴です。 ただし、育成体制の整備が前提です。カリキュラム設計やOJT体制、評価基準の構築など、仕組みづくりに一定の工数がかかります。社内に育成ノウハウがない場合は、外部研修の活用も視野に入れる必要があるため、中長期で安定した人材供給を実現したい場合に適した方法です。 方法5:業務委託・BPOインサイドセールスの業務委託・BPOは、外部の専門会社にIS業務の一部または全部を委託する方法です。最大の強みは立ち上げスピードで、自社で採用や育成を行う必要がないため、最短数週間で稼働を開始できます。専門ノウハウを持つ人材が対応するため、一定の成果を早期に見込みやすい点も特徴です。一方で、ノウハウが社内に蓄積されにくいという課題があります。外注に依存した状態が続くと、将来的な内製化のハードルが上がる可能性があるため、契約段階で「知見移転を伴う伴走型」か「実働のみのBPO型」かを明確にしておくことが重要です。費用は月額制・成果報酬型・時間単価型などサービスにより幅があり、長期的なコストバランスを踏まえた判断が欠かせません。方法6:副業・フリーランス人材の活用 副業人材やフリーランスと業務委託契約を結び、必要な範囲で関与してもらう方法は、稼働時間や期間を柔軟に調整できるため、固定費を抑えながら専門スキルを取り入れられます。週1〜2日や月数十時間のスポット稼働も可能で、特定の課題に対してピンポイントでリソースを補える点もメリットです。ただし、社外人材である以上、情報管理やマネジメントには注意が必要です。顧客情報の取り扱いやアクセス権限の管理、社内メンバーとの連携体制を整えておかないと、業務が属人化するリスクもあります。柔軟性とスピードを重視しつつ、管理体制を整えられる企業に適した方法です。 近年では、IS立ち上げ経験を持つフラクショナル人材(=複数企業で並行稼働する専門家)を活用する事例も増えており、戦略設計から実働支援までを高い解像度でカバーできる選択肢として注目されています。6つの確保方法のコスト・期間・難易度を一覧比較ここまで紹介した6つの確保方法を、コスト・戦力化期間・採用難易度・推奨フェーズの4軸で一覧比較します。自社に合った手段を判断する際の材料にしてみてください。確保方法コスト戦力化期間採用難易度方法1:中途採用高(年収+紹介手数料)短★★★★★方法2:新卒・第二新卒中(初期費用低・育成費用中)長(6ヶ月以上)★★★☆☆方法3:社内異動低(採用費なし)中(適性次第)★★☆☆☆方法4:未経験育成中(採用+育成費)中〜長★★★☆☆方法5:業務委託・BPO中〜高(月額継続)短(数週間)★☆☆☆☆方法6:副業・フリーランス中(時間単価柔軟)短★★☆☆☆※コストは目安レンジ、戦力化期間はオンボーディング含む実務独り立ちまでの期間、難易度は採用・運用の総合難易度(★が多いほど難しい)を示します。各サービス・採用手法により条件は変動するため、導入検討時には最新の条件を確認してください。自社の状況に応じた最適な確保方法の選び方採用・人材確保の手段はそれぞれ異なる強みを持つため、すべての企業に共通する最適解はありません。判断の確実性を高めるには、予算(潤沢/限定)と緊急度(短期/中長期)の2軸で自社の状況を整理し、適した組み合わせを選ぶことが有効です。パターン1:短期×予算潤沢(中途採用 + BPO併用)すぐに商談数や成果を伸ばしたい場合は、中途採用と業務委託・BPOの併用が有効です。外部リソースで数週間以内に成果を確保しながら、並行して経験者採用を進めることで、リスクを分散できます。立ち上げ初期は、スピードを優先した体制構築を最優先に据えるのが現実的です。パターン2:短期×予算限定( 社内異動 + 副業人材活用)予算に制約がありつつ短期で人員を整えたい場合は、社内異動と副業人材活用の組み合わせが現実的です。既存社員を異動させて立ち上がりの速さを確保しつつ、副業で関わる外部の専門家から不足するノウハウを補うことで、コストとスピードのバランスを取りやすくなります。パターン3:中長期×予算潤沢(未経験者育成 + BPO並走)時間的な余裕があり投資余力もある場合は、未経験者の採用・育成を主軸に据え、立ち上げ期だけBPOを並走させる構成が有効です。自社に合った人材をじっくり育てつつ、戦力化までの空白期間をBPOで埋めることで、ノウハウ蓄積と短期成果を両立できます。パターン4:中長期×予算限定(未経験者育成 + 社内異動)時間的猶予はあるが予算も抑えたい場合は、社内異動でコア人員を確保しつつ、隣接職種から未経験者を採用して育成する構成が現実的です。育成カリキュラムの内製ノウハウがあれば外部研修費用も抑えられ、自社文化に深く根づいた組織を中長期で構築できます。確保した人材を早期に戦力化するオンボーディング要点どの方法で人材を確保しても、採用後のオンボーディング設計次第で戦力化の速度は大きく変わります。確保の投資対効果を最大化するうえで、押さえておきたい3つの要点を簡潔に整理します。要点1:30/60/90日の到達目標を段階設計する入社後30日で基礎知識と業務フロー、60日でロールプレイと初回架電、90日で自走による商談獲得、というように段階的な到達目標を設計します。目標を明確にすることで、本人も上長も進捗を可視化でき、早期離職のリスクを抑えやすくなります。要点2:OJTとOFF-JTを意図的に組み合わせる座学研修(商品知識・ツール操作)と実践研修(ロールプレイ・先輩への同席)を計画的に組み合わせることで、知識と行動の両面で成長を促せます。特に未経験者の場合、最初の2週間にOFF-JT中心の基礎構築期間を設けると、その後のOJTの吸収効率が大きく変わります。要点3:習熟度を定量・定性の両面で測る架電数・商談化率・コール時間といった定量指標と、トークスキル・仮説構築力といった定性評価を組み合わせて、習熟度を多角的に測定します。定量だけだと「数はこなしているのに成果が出ない」状態の検知が遅れ、定性だけだと評価が属人化しやすいため、両輪が必要です。インサイドセールスの人材確保に関するよくある質問(FAQ) インサイドセールスの人材確保では、採用条件や育成期間、外部活用の判断など、実務で迷いやすいポイントが多くあります。ここでは、現場でよくある疑問を整理し、判断の目安を示します。 Q1. インサイドセールス経験者の採用で適切な年収水準はどのくらいですか? 年収水準は経験年数やスキル、担当領域によって大きく変わりますが、一般的にはメンバークラスで400〜550万円程度、リーダー・マネージャークラスでは600〜800万円以上の水準が提示されるケースが多く見られます[1]。特にSaaSやエンタープライズ領域の経験者は高い評価を受けやすいため、自社の給与テーブルと市場動向を踏まえた条件設計が重要になります。 Q2. 未経験者がインサイドセールスとして戦力化するまでにどのくらいかかりますか? 戦力化までの期間は一概には言えませんが、基本的な業務を自走できるようになるまでには一定の育成期間が必要になります。カスタマーサポートや販売職などの隣接経験がある場合は立ち上がりが早くなる傾向がありますが、いずれにしても育成カリキュラムやOJT体制の整備が進捗に大きく影響します。入社後の到達目標を段階的に設定し、習熟度を確認しながら進めることが有効です。 Q3. BPOと自社採用はどちらを先に検討すべきですか? BPOと自社採用のどちらを優先するかは、事業のフェーズや緊急度によって異なります。短期的に商談数を増やしたい場合や、社内に育成ノウハウがない場合は、外部リソースの活用から始める方法が現実的です。一方で、中長期的に組織力を高めたい場合は、外部活用と並行して採用・育成を進める体制が有効になります。外部で得た知見を社内に取り込み、段階的に内製化していく視点が重要です。 Q4. 社内異動でインサイドセールス担当者を確保する際の注意点は? 社内異動を進める際は、本人の意向を丁寧に確認することが前提になります。強制的な配置転換はモチベーション低下や早期離職につながる可能性があります。また、営業経験があることだけを理由に適性を判断するのは避けるべきです。インサイドセールス特有のスキルが求められるため、異動後の研修や立ち上がり支援の設計まで含めて準備しておくことが重要です。 まとめ|自社に合った確保方法を選び、次のアクションへインサイドセールスの人材確保には、中途採用新卒・第二新卒採用社内異動未経験者の育成BPO副業・フリーランス活用といった複数の選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、単一の手段に依存するのではなく、自社の状況に応じて組み合わせていく視点が重要です。 特に、経験者採用だけに頼るのではなく、求めるスキルと適性を明確にしたうえで、社内外のリソースをどう活用するかを設計することが、人材確保の成否を左右します。確保した人材を早期に戦力化するための育成やオンボーディング、定着につなげる仕組みまで含めて考える必要もあるでしょう。 まずは、自社の予算や緊急度、社内体制を整理し、どの手段から着手するのが現実的かを見極めてみてください。少しの進捗でも適切な打ち手を選ぶことで、インサイドセールス人材を採用する難しさはコントロール可能な課題に変わっていきます。 インサイドセールス組織の構築を、マイナビProfessionalが支援します「IS経験者の採用が進まない」「育成体制を整えたいが社内にノウハウがない」——本記事で扱ったこうした課題に対して、マイナビProfessionalは営業組織の構築・強化に精通したプロ人材の活用支援を提供しています。6万人超のプロ人材データベースから、インサイドセールスの立ち上げ・組織設計・人材育成の実績を持つ人材を選定し、最短3週間で協働を開始できます。マイナビの専任チーム2名(企業担当・人材担当)が課題整理から人材選定、プロジェクト進行まで伴走するため、「何から始めればよいかわからない」段階からでもご相談いただけます。1名から、最短3か月から契約可能です。まずは育成カリキュラムの設計や採用要件の整理など、特定のテーマに絞った活用から始めてみてはいかがでしょうか。参考文献・出典 [1]株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント「インサイドセールスの転職事情|平均年収や求められるスキル経験などを解説」 https://www.jac-recruitment.jp/market/sales/inside-sales/?utm_source=chatgpt.com